海月衛 映画帖
~映画の大海原をたゆたう~

日本映画レビュー──1916年

雷門大火 血染の纏

製作:日活京都
公開:1916年4月
監督:不祥

歌舞伎のように見得を切るのが何とも新鮮
 日本のサイレント映画の初期作品。主演は日本初の映画スター、目玉の松ちゃんこと尾上松之助で、人気絶頂期のもの。
 現在の葛飾区新宿付近か? 茶屋のシーンから始まり、侍たちを相手に成田道の道標を振り上げての立ち回りで追い払い、茶屋の婆さんを助ける。その腕っぷしを買われて鳶よ組の親分にスカウトされるが、先輩が臍を曲げて親分と喧嘩別れ、橘組に移籍。
 雷門が火事になって両者が先陣争い。消火もしないで喧嘩となり、仲裁した橘組の親分を櫓から突き落とし・・・と、字幕もほとんどないサイレントで筋を追うのは至難の業。解説によれば、この件でお縄になった仙太(尾上松之助)が遠島処分となり、よ組の親分が殺されて島破り、先輩への親分の仇討となる。
 一部コマ飛びのトリック撮影があったりして、全体はアクションが主体。
 当時としては当たり前だったが、このアクションの度に絵になるポーズを作って動きを止め、歌舞伎のように見得を切るのが何とも新鮮だが、これをアクションの途中で何度もやられると、微笑ましいというか力が抜ける。
 ちなみに江戸時代、よ組は最大の火消で町火消の花形だったが受け持ちは神田で、雷門に一番纏を上げるにはやや遠い。 (評価:2.5)