外国映画レビュー──1944年
三人の騎士
日本公開:1959年3月10日
監督:ノーマン・ファーガソン 製作:ウォルト・ディズニー 脚本:ビル・ピート 撮影:レイ・レナハン 音楽:チャールズ・ウォルコット、ポール・J・スミス、エドワード・プラム
原題"The Three Caballeros"で、邦題の意。Caballero(騎士)はスペイン語。
ディズニー長編アニメーション第7作で、前作『ラテン・アメリカの旅』(1942)の続編。南極・ウルグアイ・ブラジル・メキシコを舞台とするオムニバスで、三騎士はドナルドとホセ、パンチート。ブラジルとメキシコに住む二人からドナルドに映像の誕生日プレゼントが届いたという設定になっている。
後半のブラジル・メキシコ篇からはアニメと実写の合成になっていて、それも単なる合成ではなく背景と動き、音楽を融合させた巧みな演出が素晴らしい。
アニメーションの道を実物の歌手が歌いながら前に進んでくる映像など見どころが盛りだくさん。ドナルドなどのアニメキャラクターの動きに合わせた実写の人物の掛け合いなど、緻密に計算された実写演出に当時のディズニーのアニメーターたちのクリエイティブに対する意気込みを見ることができる。
メキシコの歌姫ドラ・ルスが"Solamente una vez"を英語で歌う"You Belong to My Heart"もうっとりする。
前半の南極・ウルグアイはアニメーションのみだが、南極の寒がりのペンギンが南国へ避寒のために引っ越すエピソードが漫画映画らしくて楽しい。
ファミリーで楽しめる佳作。 (評価:3)
製作国:アメリカ
日本公開:1947年6月3日
監督:ジョージ・キューカー 製作:アーサー・ホーンブロウ・Jr 脚本:ジョン・ヴァン・ドルーテン、ウォルター・ライシュ、ジョン・L・ボルダーストン 撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ 音楽:ブロニスラウ・ケイパー
キネマ旬報:9位
虐められる超絶美女の歪んだ顔がS心をくすぐる
原題"Gaslight"で、邦題の意。パトリック・ハミルトンの同名戯曲が原作のサスペンス劇。
ロンドンの叔母の家で暮らしていた娘(イングリッド・バーグマン)が、叔母が殺されてイタリアに音楽で留学。知り合った男( シャルル・ボワイエ)と結婚し叔母に家に戻ってくるが、夜毎ガス燈の明かりが暗くなる幻覚と屋根裏の物音の幻聴に悩まされ、物忘れもひどく、夫から精神病だと言われる。
ところがそれは夫が仕組んだ罠で、叔母の遺した宝石を家探しして持ち去るため。叔母殺しも夫の仕業だったというもの。
事件を解決してくれるのはロンドン警視庁の検査官(ジョゼフ・コットン)で、オペラ歌手だった叔母のファンだったことから捜査を続けていた。
ボワイエに精神的虐待を受けるバーグマンが見どころだが、専制的で大してイイ男でもない中年にバーグマンが大人しく従うのがちょっと理解できない。虐められる超絶美女の歪んだ顔というのもS心をくすぐるのだが…
虐められまくる演技で、イングリッド・バーグマンはアカデミー主演女優賞を受賞。詮索好きなおばさん役にメイ・ウィッティ、家の料理人にバーバラ・エヴェレスト。ふしだらなメイドのアンジェラ・ランズベリー17歳が太々しくていい。
ガス燈が灯り、霧の流れる19世紀ロンドンの石畳の道がサスペンスに相応しい雰囲気を醸し出す、クラシカルな味わいのある名編。 (評価:2.5)
日本公開:1947年6月3日
監督:ジョージ・キューカー 製作:アーサー・ホーンブロウ・Jr 脚本:ジョン・ヴァン・ドルーテン、ウォルター・ライシュ、ジョン・L・ボルダーストン 撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ 音楽:ブロニスラウ・ケイパー
キネマ旬報:9位
原題"Gaslight"で、邦題の意。パトリック・ハミルトンの同名戯曲が原作のサスペンス劇。
ロンドンの叔母の家で暮らしていた娘(イングリッド・バーグマン)が、叔母が殺されてイタリアに音楽で留学。知り合った男( シャルル・ボワイエ)と結婚し叔母に家に戻ってくるが、夜毎ガス燈の明かりが暗くなる幻覚と屋根裏の物音の幻聴に悩まされ、物忘れもひどく、夫から精神病だと言われる。
ところがそれは夫が仕組んだ罠で、叔母の遺した宝石を家探しして持ち去るため。叔母殺しも夫の仕業だったというもの。
事件を解決してくれるのはロンドン警視庁の検査官(ジョゼフ・コットン)で、オペラ歌手だった叔母のファンだったことから捜査を続けていた。
ボワイエに精神的虐待を受けるバーグマンが見どころだが、専制的で大してイイ男でもない中年にバーグマンが大人しく従うのがちょっと理解できない。虐められる超絶美女の歪んだ顔というのもS心をくすぐるのだが…
虐められまくる演技で、イングリッド・バーグマンはアカデミー主演女優賞を受賞。詮索好きなおばさん役にメイ・ウィッティ、家の料理人にバーバラ・エヴェレスト。ふしだらなメイドのアンジェラ・ランズベリー17歳が太々しくていい。
ガス燈が灯り、霧の流れる19世紀ロンドンの石畳の道がサスペンスに相応しい雰囲気を醸し出す、クラシカルな味わいのある名編。 (評価:2.5)
ベイジル・ラスボーン版 シャーロック・ホームズ 緋色の爪
日本公開:劇場未公開
監督:ロイ・ウィリアム・ニール 製作:ロイ・ウィリアム・ニール 脚本:ロイ・ウィリアム・ニール、エドマンド・L・ハートマン 撮影:ジョージ・ロビンソン
原題は"The Scarlet Claw"で邦題の意。ベイジル・ラスボーンはシャーロック・ホームズ役で人気となったトーキー初期のイギリス人俳優。ワーナー・ブラザース製作の14本の映画シリーズの第9話。ワトソン役はナイジェル・ブルース。日本未公開。
オリジナル脚本だが、『バスカヴィル家の犬』とよく似た設定。カナダの片田舎の村で、怪物に元女優が殺されるという事件が起きる。事件を知らせるのは犬の遠吠えではなく教会の13回の鐘。襲われたのは沼地で、喉には爪の跡。失血死。沼地の近くには怪しげな男がいて、元判事が殺され、次に殺されるのは元看守かと思いきや・・・と因縁話が明らかになる。
怪物に化けていたのが元俳優で、他人になりすまして名演技をするというアイディアが面白く、シリーズ中でも一番の出来といわれる作品。よくできたシナリオで、怪奇色も漂わせながら『バスカヴィル家の犬』と似て非なる面白さが楽しめるが、誰が13回の鐘を鳴らしたのかは最後までわからない。 (評価:2.5)
ベイジル・ラスボーン版 シャーロック・ホームズ 死の真珠
日本公開:劇場未公開
監督:ロイ・ウィリアム・ニール 製作:ロイ・ウィリアム・ニール 脚本:バートラム・ミルハウザー 撮影:ヴァージル・ミラー
原題は"The Pearl of Death"で邦題の意。『六つのナポレオン』が原作。
ベイジル・ラスボーンはシャーロック・ホームズ役で人気となったトーキー初期のイギリス人俳優。ワーナー・ブラザース製作の14本の映画シリーズの第8話。ワトソン役はナイジェル・ブルース。日本未公開。
石膏像の製造販売店で生乾きのナポレオンの胸像に、盗まれた国宝級の真珠が隠され、胸像が6つあったことから、取り戻そうとした犯人によって次々殺人が起こるという事件。原作を基に、脚色も上手くいっていて、楽しめる作品になっている。
冒頭はホームズと宝石泥棒の美女のエピソードが入り、ワトソンも真珠を口に含むなどのコミカルな演出が楽しい。博物館に収蔵される際に、ホームズの思い上がりから犯人に再び盗まれてしまうというエピソードもよく、ホームズが色を失うのも可愛らしい。
名誉挽回とばかりに真珠の行方を追うと、連続殺人事件が起き・・・という展開。
『シャーロック・ホームズと恐怖の声』に続いて出演のイヴリン・アンカースが、七変化する宝石泥棒の美女を演じて、『ヤッターマン』のドロンジョのようでちょっと可愛い。 (評価:2.5)
深夜の告白
日本公開:1953年12月15日
監督:ビリー・ワイルダー 脚本:ビリー・ワイルダー、レイモンド・チャンドラー 撮影:ジョン・サイツ 音楽:ミクロス・ローザ
原題"Double Indemnity"で、倍額保障の意。ジェームズ・M・ケインの同名小説が原作。
保険セールスマンが自動車保険の更新のために訪れた金持ちの家で、若い後妻(バーバラ・スタンウィック)と懇ろになり、年寄りの夫を騙して損害保険に加入させ、倍額保障の付いた列車事故死に見せかけて、共謀して保険金殺人をするという物語。
保険会社の調査員が事故の不自然さに気づくが、セールスマンもまた後妻が先妻を殺していたこと、さらには後妻に別に愛人がいることを知り、自分も同じ目に遭うことを危惧。調査員が所有するディクタフォンという蝋管録音機に事件の顛末を記録したところで御用となる。
プロローグはディクタフォンへの録音から始まる回想形式となっている。
保険セールスマンが美人の後妻に騙されていたというのがオチで、男を食い物にするバーバラ・スタンウィックのカマキリ女ぶりが見どころ。
前半、あれよあれよという間に後妻と仲良くなるセールスマンがただのスケコマシにしか見えず、阿吽の呼吸で保険金殺人を共謀するのが不自然に見えるが、カマキリ女だという終盤の説明で納得。セールスマンがスケコマシのバカにしか見えなくなる。
保険金殺人計画は相当に穴だらけだが、制作年代を考えれば、まあこんなものか。
サスペンスとしてはそこそこに面白いが、保険加入直後に倍額保障の死亡という疑われて当然の保険金殺人で、列車事故がなぜ倍額なのかというのもよくわからない、仕掛けのためのご都合主義が若干気に障る。
博物館的なディクタフォンが隠れた見どころ。 (評価:2.5)
ベイジル・ラスボーン版 シャーロック・ホームズ 蜘蛛女
日本公開:劇場未公開
監督:ロイ・ウィリアム・ニール 製作:ロイ・ウィリアム・ニール 脚本:バートラム・ミルハウザー 撮影:チャールズ・ヴァン・エンジャー
原題"The Spider Woman"で邦題の意。ベイジル・ラスボーンはシャーロック・ホームズ役で人気となったトーキー初期のイギリス人俳優。ワーナー・ブラザース製作の14本の映画シリーズの第7話。ワトソン役はナイジェル・ブルース。日本未公開。
短編の要素を織り込みながらのオリジナル。パジャマ姿の自殺が連続し、何かあると睨んだホームズは、死んだ振りをして身を隠し(最後の事件・空き家の冒険)、インド人の金持(四つの署名)になりすまして蜘蛛女をおびき出し、通気口と毒蜘蛛(まだらの紐)を使った保険金殺人の真相を知る。更に蜘蛛女はベーカー街を訪れ、ホームズを暖炉の有毒ガス(悪魔の足)で殺そうとし、ホームズは毒蜘蛛を提供した研究者を割り出し、蜘蛛女を捕まえる。
ホームズらしい要素が散りばめられていて、それなりに楽しめるが、短編を切り貼りしたためにそれぞれの要素がうまく繋がらない継ぎ接ぎ感は残る。
それにしても保険金殺人なのに、途中からは銃を使って何が何でもホームズを殺そうというのも乱暴。蜘蛛女役のゲイル・ソンダガードが妖艶でちょっといい。 (評価:2.5)
製作国:アメリカ
日本公開:1947年5月13日
監督:ヘンリー・コスター 製作:ジョー・パスターナク 脚本:マイルズ・コノリー 撮影:ロバート・サーティース 音楽:ジョージ・ストール
キネマ旬報:5位
名子役を前面に押し出したあざとさが嫌味
原題"Music for Millions"で、邦題の意。
名子役マーガレット・オブライエン主演で第二次世界大戦中に作られた国策映画。ストーリー上は、姉役のジューン・アリソンが主役だが、オブライエンが主演にクレジットされている。
6歳の少女マイク(マーガレット・オブライエン)が、ニューヨークに住むオーケストラのコントラバス奏者の姉バーバラ(ジューン・アリソン)を頼って上京。時は戦時中とあって、若い男の楽団員は戦争に駆り出され、オーケストラには女と年寄りの男しかいない。
バーバラの夫も南太平洋に出征し、しかも妊娠中。そこに戦死の電報が届くが、楽団員たちは無事出産するまではと隠してしまう。
それでも戦地からの手紙が途絶えてバーバラは戦死したのではないかと心配。マイクは姉を教会に連れて行き、「神に祈れば必ず思いは叶う」と元気づけ、楽団員たちは偽の夫の手紙がバーバラに届くように工作。
オーケストラはマイクを連れて全米の基地の慰問ツアーに出掛けるが、月が満ちバーバラが男の子を出産。その時、偽の夫の手紙が実は…というハッピーエンドとなる。
「神に祈れば…」の下りでオチは読めてしまうのだが、夫や息子を戦地に送り出した銃後のアメリカ国民に対して、「神に祈れば…」の勇気と希望を与える映画となっている。
オブライエンの可愛らしさを前面に押し出したコメディだが、却ってそのあざとさが嫌味になっていて、オブライエンがただのこまっしゃくれたガキにしか見えないのがウザい。
タイトルの"Music for Millions"は、アメリカ国民みんなのための音楽の意味で、音楽映画でもある本作そのものを指している。
オーケストラの楽団長役にピアニストで指揮者のホセ・イトゥルビ、マネージャー役にラグタイム・ピアニストで歌手のジミー・デュランテ、ハーモニカ奏者のラリー・アドラーらの演奏も聞きどころ。 (評価:2)
日本公開:1947年5月13日
監督:ヘンリー・コスター 製作:ジョー・パスターナク 脚本:マイルズ・コノリー 撮影:ロバート・サーティース 音楽:ジョージ・ストール
キネマ旬報:5位
原題"Music for Millions"で、邦題の意。
名子役マーガレット・オブライエン主演で第二次世界大戦中に作られた国策映画。ストーリー上は、姉役のジューン・アリソンが主役だが、オブライエンが主演にクレジットされている。
6歳の少女マイク(マーガレット・オブライエン)が、ニューヨークに住むオーケストラのコントラバス奏者の姉バーバラ(ジューン・アリソン)を頼って上京。時は戦時中とあって、若い男の楽団員は戦争に駆り出され、オーケストラには女と年寄りの男しかいない。
バーバラの夫も南太平洋に出征し、しかも妊娠中。そこに戦死の電報が届くが、楽団員たちは無事出産するまではと隠してしまう。
それでも戦地からの手紙が途絶えてバーバラは戦死したのではないかと心配。マイクは姉を教会に連れて行き、「神に祈れば必ず思いは叶う」と元気づけ、楽団員たちは偽の夫の手紙がバーバラに届くように工作。
オーケストラはマイクを連れて全米の基地の慰問ツアーに出掛けるが、月が満ちバーバラが男の子を出産。その時、偽の夫の手紙が実は…というハッピーエンドとなる。
「神に祈れば…」の下りでオチは読めてしまうのだが、夫や息子を戦地に送り出した銃後のアメリカ国民に対して、「神に祈れば…」の勇気と希望を与える映画となっている。
オブライエンの可愛らしさを前面に押し出したコメディだが、却ってそのあざとさが嫌味になっていて、オブライエンがただのこまっしゃくれたガキにしか見えないのがウザい。
タイトルの"Music for Millions"は、アメリカ国民みんなのための音楽の意味で、音楽映画でもある本作そのものを指している。
オーケストラの楽団長役にピアニストで指揮者のホセ・イトゥルビ、マネージャー役にラグタイム・ピアニストで歌手のジミー・デュランテ、ハーモニカ奏者のラリー・アドラーらの演奏も聞きどころ。 (評価:2)
イワン雷帝 第1部
日本公開:1948年11月20日
監督:セルゲイ・M・エイゼンシュテイン 脚本:セルゲイ・M・エイゼンシュテイン 撮影:エドゥアルド・ティッセ、アンドレイ・モスクウィン 美術:イオシフ・シピネーリ 音楽:セルゲイ・プロコーフイェフ
原題"Иван Грозный"で、イワン雷帝の意。
物語は、ロシアを統一した皇帝イワン4世(ニコライ・チェルカーソフ)の1547年の戴冠式から始まる。
アナスタシア(リュドミーラ・ツェリコフスカヤ)との結婚、カザン制圧を経て帝政を確立するが、大病して長子を後継指名しようとし、従弟ウラジーミル(パーヴェル・カードチニコフ)に帝位を継がせようとする叔母エフロシニア(カラフィーマ・ビルマン)や帝政に不満を持つ世襲貴族たちがこれに反発して拒否。
イワンの快癒後、アナスタシアは毒殺され、バルト海を目指した遠征軍も敗北、親友で腹心のクルプスキー(ミハイル・ナズワーノフ)もリトアニアに亡命してしまう。
失意してモスクワから隠遁したイワンが、民衆の求めに応じて再び立つ決意をするまでが第1部。
初代ロシア皇帝の史劇とは言いつつもそこは教宣映画になっていて、イワンの功績としてはロシア統一、国土の拡張、ゲルマン国家を中心とするヨーロッパからの祖国防衛が強調されている。とりわけ、世襲貴族の専横との戦いに重きが置かれていて、既得権益を貪るロシア正教ともども民衆の敵=反革命として描かれている。
貴族以外の者を登用し、貴族・聖職者の搾取から民衆を守った皇帝という位置づけは、当時独裁的だったソ連の指導者スターリン礼賛にも繋がり、スターリン賞を受賞している。
本作最大の見どころは、歌舞伎に影響を受けた演出で、出演者たちが見得を切るように目を大きく見開いた顔の大写しのモンタージュが、とりわけ前半に連続するが、若干くどくて違和感を感じるかもしれない。
演出は全体にテンポが緩く、冗長な感は否めない。 (評価:2)
製作国:アメリカ
日本公開:1946年10月2日
監督:レオ・マッケリー 製作:レオ・マッケリー 脚本:フランク・バトラー、フランク・キャヴェット 撮影:ライオネル・リンドン 音楽:ジェームズ・ヴァン・ヒューゼン、ロバート・エメット・ドーラン
キネマ旬報:1位
アカデミー作品賞 ゴールデングローブ作品賞
黴臭いヒューマンドラマを心を無にして味わう
原題"Going My Way"。
ニューヨーク下町のドミニク教会に赴任してきた若い神父(ビング・クロスビー)が、老神父(バリー・フィッツジェラルド)をいたわりながら、借金まみれの教会財政を立て直し、引退しかかっていた老神父に自信を与え、再び別の破産しかかった老神父の教会に赴任していくという物語。
神をも恐れぬ無神論者の教会債権者や、その息子と歌手志望の娘の恋、若神父のかつての恋人でオペラ歌手(リーゼ・スティーヴンス)なども登場し、心温まるヒューマンドラマを展開するが、そこは20世紀半ばのキリスト教的ヒューマニズムで、21世紀から見れば凡庸・定型的でいささか黴臭い。
本作の見どころは、そうしたキリスト教的倫理観、宗教的献身と古典的ヒューマニズムに共感できるかどうかだが、ビング・クロスビーの伸びやかな歌声やリーゼ・スティーヴンスのソプラノも聴きどころの音楽映画でもあって、さらにはニューヨークの古い町並みも映像的には楽しめるとあって、古き良き時代を心を無にして味わうことができる。
劇中で音楽プロデューサーにいい曲だがつまらないと言われる主題歌の"Going My Way"は、言葉の通りにつまらなく、楽しい曲だと褒められた"Swinging on a Star"がアカデミー歌曲賞を受賞している。 (評価:2)
日本公開:1946年10月2日
監督:レオ・マッケリー 製作:レオ・マッケリー 脚本:フランク・バトラー、フランク・キャヴェット 撮影:ライオネル・リンドン 音楽:ジェームズ・ヴァン・ヒューゼン、ロバート・エメット・ドーラン
キネマ旬報:1位
アカデミー作品賞 ゴールデングローブ作品賞
原題"Going My Way"。
ニューヨーク下町のドミニク教会に赴任してきた若い神父(ビング・クロスビー)が、老神父(バリー・フィッツジェラルド)をいたわりながら、借金まみれの教会財政を立て直し、引退しかかっていた老神父に自信を与え、再び別の破産しかかった老神父の教会に赴任していくという物語。
神をも恐れぬ無神論者の教会債権者や、その息子と歌手志望の娘の恋、若神父のかつての恋人でオペラ歌手(リーゼ・スティーヴンス)なども登場し、心温まるヒューマンドラマを展開するが、そこは20世紀半ばのキリスト教的ヒューマニズムで、21世紀から見れば凡庸・定型的でいささか黴臭い。
本作の見どころは、そうしたキリスト教的倫理観、宗教的献身と古典的ヒューマニズムに共感できるかどうかだが、ビング・クロスビーの伸びやかな歌声やリーゼ・スティーヴンスのソプラノも聴きどころの音楽映画でもあって、さらにはニューヨークの古い町並みも映像的には楽しめるとあって、古き良き時代を心を無にして味わうことができる。
劇中で音楽プロデューサーにいい曲だがつまらないと言われる主題歌の"Going My Way"は、言葉の通りにつまらなく、楽しい曲だと褒められた"Swinging on a Star"がアカデミー歌曲賞を受賞している。 (評価:2)
若草の頃
日本公開:1951年3月10日
監督:ヴィンセント・ミネリ 製作:アーサー・フリード 脚本:フレッド・F・フィンクルホフ、アーヴィング・ブレッチャー 撮影:ジョージ・フォルシー 音楽:ロジャー・イーデンス、ジョージ・ストール
原題"Meet Me in St. Louis"で、セントルイスで会おうの意。サリー・ベンソンの同名小説が原作。
1904年のセントルイス万国博覧会を翌年に控えた、スミス一家の夏からクリスマスにかけての半年間を描く物語。四姉妹ということで、『若草物語』(1949)と似た設定の上、どちらにも名子役のマーガレット・オブライエンが出演、日本での公開が『若草物語』の後だったので、続編のような邦題がつけられて紛らわしい。
中身はというと娘たちの恋愛話が中心で、正直つまらない。目玉は4女オブライエンと2女ジュディ・ガーランドなのだが、ミュージカルというには歌唱シーンが少なく歌謡映画程度で中途半端。ガーランドの芝居を観たいわけではないと、平凡な中流一家の他愛のない話に付き合わされて退屈する。
作品に意味を求めるとすれば、万博を前にして時代の転換期に立つ地方都市セントルイスと、その波に乗ってニューヨークに新天地を求めようとする父、セントルイスに留まろうとする保守的な家族の相克の中で、父が家族の幸福を優先してセントルイスに留まるという、少々生温い地方主義のドラマということになる。ラストは地方の時代の幕開けを象徴する万博シーンとそれを楽しむ一家で終わる。
主題歌の"Meet Me in St. Louis, Louis"は万博の時に作られた歌。ガーランドが満員の路面電車で歌う"The Trolley Song"が楽しい。 (評価:2)
アリババと四十人の盗賊
日本公開:1951年12月27日
監督:アーサー・ルービン 製作:ポール・マルヴァーン 脚本:エドモンド・L・ハートマン 撮影:ジョージ・ロビンソン、W・ハワード・グリーン 音楽:エドワード・ウォード
原題"Ali Baba and the Forty Thieves"で、邦題の意。
ガラン版『千夜一夜物語』の中の同名の物語に設定を借りているが、いくつかのアイディアを除けば似ても似つかない作品で、ストーリーは陳腐な上に少しも面白くないという駄作。
ハリウッド的なラブストーリー仕立ての貴種漂流譚に、黄禍論、復讐劇、さらには剣舞ショーと盛り沢山な割には、どれも類型的で中身がなく中途半端。ホワイトウォッシングも徹底していて、バグダッドを舞台にした白人劇に思わず失笑する。
バグダッドがモンゴル人のカーン(カート・カッチ)に侵略されるが、演じるのは禿頭のポーランド人。これに協力してカリフを裏切るのがアラブ人のカシム(フランク・パリア)で、イタリア系。カーンの婚約者となるカシムの娘アマラ(マリア・モンテス)がスペイン系。アリババの40人の盗賊に養育されて立派な盗賊となる、カリフの息子アリ(ジョン・ホール)がヨーロッパ系。
アマラとアリは元許嫁で、互いの素性を知ってカーンを倒し、メデタシメデタシというシンプル・ストーリー。
テクニカラーの女王、マリア・モンテスのエキゾチックな似非アラブ美女が見どころか。 (評価:1.5)