海月衛 映画帖
~映画の大海原をたゆたう~

外国映画レビュー──2007年

製作国:中国、アメリカ
日本公開:2008年2月2日
監督:アン・リー 製作:ビル・コン、アン・リー、ジェームズ・シェイマス 脚本:ワン・フイリン、ジェームズ・シェイマス 撮影:ロドリゴ・プリエト 音楽:アレクサンドル・デスプラ
キネマ旬報:4位
ヴェネツィア映画祭金獅子賞

抗日女スパイをアン・リーが哀愁の色に染め上げる佳作
 原題は"色・戒"(英題:Lust, Caution)で、「色欲・戒め」の意。中国人作家アイリーン・チャンの同名短編小説が原作。
 実在の抗日スパイの中国女がモデル。香港の一女子大生が、国民党の抗日スパイに身を投じ、南京国民政府の特務機関の責任者を暗殺するために情婦となるも、失敗して花と散る物語。1938年からの4年間を描くが、モデルは1940年に22歳で死んでいる。
 本作を一言でいえば、戦争の時代にたまたま抗日運動に誘われて短い一生を終えることになった薄幸の美女の物語で、戦争がなければきっと幸せな一生を送ったであろう悲しみを、アン・リーが哀愁の色に染め上げる。
 抗日のハンサムを好きになったばかりにスパイにされ、既婚女性としてターゲットに接近。情婦になるのを覚悟して、好きでもない男にセックスの手ほどきを受けたにも拘らず、ターゲットに一歩手前で逃げられてしまう。普通の女性に戻ったのに、抗日のハンサムの頼みで再びスパイになってターゲットに接近。今度は情婦になることに成功するが、いつしか相手を好きになり、仲間を裏切って逃がしてしまう。結果は仲間ともども捕えられ、哀れにも情婦となった男の命令で命を絶たれる。
 これほど悲しい女の一生はないというくらいに悲しい女を中国女優タン・ウェイが演じ、漢奸役のトニー・レオンを相手に大胆なベッドシーンを展開する。このベッドシーンと、漢奸に恋した女を演じたことが中国では不評を買って、女スパイ同様に裏切り者扱いされてしまった。
 これを翻せば、本作は政治的な反日映画にはなっていないということで、日本兵などの描き方が若干ステレオタイプではあるが、日本人が見ても不快感なく楽しめる。
 戦時中の上海の様子など、よく再現されている。ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞。 (評価:3)

製作国:アメリカ
日本公開:2008年3月15日
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 製作:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン、スコット・ルーディン 脚本:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 撮影:ロジャー・ディーキンス 音楽:カーター・バーウェル
キネマ旬報:1位
アカデミー作品賞

ハビエル・バルデムの空気ボンベを持った姿が怖い
 原題"No Country for Old Men"で老人の住めない国の意。コーマック・マッカーシーの同名小説が原作。
 祖父・父と代々がテキサスの保安官で、25歳のときから自分も保安官を務めてきた老人(トミー・リー・ジョーンズ)が、ある事件を通して引退を決意するまでの物語。
 彼曰く、銃を携行しないで済んだ保安官の昔話が懐かしい。今は意味もなく人を殺す時代になった。
 若い頃に電気椅子に送った少年は、誰かを殺して見たくて少女を殺した。そして、本作で描かれる殺人鬼は、コインで殺すかどうかを決める。
 麻薬取引のトラブルに偶然出くわした男が金を持ち逃げし、殺人鬼はその金を取り戻すために男を追いかけるというのが物語の筋だが、舞台は1980年でベトナム戦争終結後のアメリカ社会というのがミソになっている。
 持ち逃げした男はベトナム帰還兵。殺す方も殺される方も人間性を失っていて、保安官が銃を手にしなくてはならない社会になったのには理由はいろいろあるがと言いながら、原因の一つにベトナム戦争があると仄めかしもする。
 物語は徹頭徹尾、空気銃で殺しまくる殺人鬼と、大金の入った鞄を持って逃げまくる男とのバイオレンス・アクションで、そのチェイスを見ているだけでも十分楽しめるが、事件そのものは解決しないのでが見終わってすっきりしない。
 しかも、ラストは引退した保安官と妻の会話で、良き時代のアメリカが失われ、暴力が支配する国になってしまったことを憂えることがテーマだとはわかるが、ただ嘆いているだけの作品に終わっていて、そこから導き出されるものは何もない。
 ハビエル・バルデムが不気味で無感情な殺人鬼を好演し、アカデミー助演男優賞を受賞。空気ボンベを持った姿が怖い。 (評価:2.5)

エリート・スクワッド

製作国:ブラジル
日本公開:劇場未公開
監督:ジョゼ・パジーリャ 製作:マルコス・プラード、ジョゼ・ジョゼ・パジーリャ 脚本:ジョゼ・パジーリャ、ホドリゴ・ピメンテル、ブラウリオ・マントヴァーニ 撮影:ルラ・カルヴァーリョ 音楽:ペドロ・ブロンフマン
ベルリン映画祭金熊賞

麻薬を中心に回っているリオが絶望的な街に見えてくる
 原題"Tropa de Elite"で、精鋭チームの意。
 リオデジャネイロのスラム街を中心に活動する軍警察を描く。語り手はエリート・スクワッドである特殊警察作戦大隊(BOPE)のナシメント大佐(ヴァグネル・モウラ)。
 妻が妊娠したため、ナシメント大佐は過酷なBOPEの分隊長の座を譲ろうと後継者の育成を始める。厳しい選考が行われ、最終的に残ったのが軍警察に入ったばかりのネト(カイオ・ジュンケイラ)とマティアス(アンドレ・ハミロ)。
 マティアスは法学部の大学生でもあり、警察に残るか弁護士になるか迷っている。大学で知り合ったマリア(フェルナンダ・マシャード)はNGOでスラムの子供たちを支援しているが、NGOに資金提供しているのはスラムを牛耳る麻薬ギャングで、軍警察は幹部ぐるみで賄賂を貰い、ギャングとの対立を回避している始末。
 リオの複雑な社会を背景にギャングと戦う正義がBOPEで、殺さなければ殺されるをモットーにする凄まじさ。追い詰められたギャングのボス・バイアノ(ファビオ・ラゴ)が、マティアスがNGOに入り込んだ警察のスパイと断じ、NGOメンバーを殺戮、マティアスと勘違いしてネトを殺してしまう。
 ナシメントはマティアスと共に復讐戦を開始、ネトを死なせた悔悟からBOPEに残るという結末。
 全編手持ちカメラでドキュメンタリー風に撮られているのが特色で、腐敗した軍警察、マリファナ中毒の大学生たち、キャングに支えられたスラムのボランティアと、すべては麻薬を中心に回っているリオが絶望的なごみ溜めのような街に見えてくる。 (評価:2.5)

エディット・ピアフ 愛の讃歌

製作国:フランス、イギリス、チェコ
日本公開:2007年9月29日
監督:オリヴィエ・ダアン 製作:アラン・ゴールドマン 脚本:オリヴィエ・ダアン、イザベル・ソベルマン 撮影:永田鉄男 美術:オリヴィエ・ラウー 音楽:クリストファー・ガニング

恋人の航空機事故死を知るワンショットに見応え
 20世紀中頃に活躍したシャンソン歌手・エディット・ピアフの生涯を描く伝記映画。原題"La Môme"は子どもの意で、エディット・ピアフの最初の芸名"La Môme Piaf"(子スズメ)から。
 物語は1959年、ピアフがステージで倒れるシーンから始まり、病床での少女時代の回想になる。路上歌手の母に捨てられ、祖母の娼家に預けられた生い立ち。娼婦ティティン(エマニュエル・セニエ)に可愛がられるが、第一次世界大戦から復員した大道芸の父とともに旅回りに。独立して路上で歌っているところをスカウトされ、クラブ歌手からステージ歌手へと駆け足で1959年まで進む。
 この間、プロローグの続きがカットバックされ、回想が追いついたところで、酒とモルヒネで自滅していくピアフに重なり、恋人を心の支えにして再起し、恋人の死によって命運尽きるまで。
 犯罪組織との関わり、少女時代の同棲と子供の死など、ピアフの悲惨な人生が描かれるが、ラストは死の直前にパリのオランピア劇場で「私はなにも後悔しない」(水に流して)を歌うシーンで締める。
 伝記としては必要最小限のエピソードは押さえてあり、駆け足にも拘らずピアフの人生を俯瞰できるまとまったシナリオになっている。ただ、彼女の人生観に迫れたかというと単なる略歴でしかないのが残念なところ。
 恋人のボクサー(ジャン=ピエール・マルタンス)の航空機事故死を知る長回しのワンショットが、緊迫感と転機となるピアフの心の動きを効果的に描いて見応えがある。
 ピアフを演じたマリオン・コティヤールがアカデミー主演女優賞。歌はエディット・ピアフの録音。 (評価:2.5)

製作国:イギリス、カナダ、アメリカ
日本公開:2008年6月14日
監督:デヴィッド・クローネンバーグ 製作:ポール・ウェブスター、ロバート・ラントス 脚本:スティーヴ・ナイト 撮影:ピーター・サシツキー 音楽:ハワード・ショア
キネマ旬報:6位

チンチンを揺らせながらの全裸の格闘が男には不安で怖い
 原題"Eastern Promises"で直訳すると東側の契約だが、本作ではロンドンでの東欧犯罪組織の人身売買契約のことを意味する。
 14歳の身元不明の妊婦が緊急搬送され、嬰児を遺して母親は死亡する。看護師(ナオミ・ワッツ)が赤ん坊を親戚に渡そうとして、遺されたロシア語の日記をもとに身元調査を開始するが、彼女がウクライナからロシア・マフィアに騙されてイギリスにやってきて、組織のボス(アーミン・ミューラー・スタール)にレイプされて妊娠したことがわかる・・・というのが前半の筋。
 これにボスのバカ息子(ヴァンサン・カッセル)、組織の運転手(ヴィゴ・モーテンセン)が絡み、看護師と運転手を中心にドラマは展開していく。看護師の叔父が元KGBで、運転手が不審な動きを始めるあたりから、KGBの後身FSB(ロシア連邦保安庁)の潜入捜査という見当がついてしまうが、ストーリーそのものは緩まず、最後まで楽しめる。
 冒頭で登場する嬰児のクリーチャーが生々しく、ナイフで首を掻っ切るシーンや指を切断する場面、冷凍された死体など、18禁の造形がリアルなところも見どころ。
 主人公であるナオミ・ワッツが死ぬわけはないので、FSBの潜入捜査官がどうなるか? というのがサスペンス的な見どころとなる。ロシア・マフィア撲滅のために体中が刺青だらけになる潜入捜査官は、最後はロンドン警視庁にボスを逮捕させて自分がマフィアのボスに納まるが、さらに犯罪組織の取り締まりに手を広げるのか、それとも頂点を極めてマフィアに転職するのかよくわからない結末で、あるいは続編狙いだったのか?
 そんな中途半端な終わらせ方も余韻といえなくもなく、デヴィッド・クローネンバーグの円熟した演出が光る。
 ヴィゴ・モーテンセンがサウナ室で、チンチンを揺らせながら全裸で格闘するシーンが、男には身の毛がよだつほど不安で怖い。 (評価:2.5)

製作国:ベルギー、ルクセンブルク、イギリス、ドイツ、フランス
日本公開:2007年12月8日
監督:サム・ガルバルスキ 製作:セバスティアン・ドゥロワ、ディアナ・エルボーム 脚本:フィリップ・ブラスバン、マーティン・ヘロン 撮影:クリストフ・ボーカルヌ 音楽:ギンズ
キネマ旬報:6位

ハートフル・コメディだが家族で見るには躊躇われる
 原題"Irina Palm"で、イリーナの掌の意。イリーナは主人公の風俗店での源氏名。
 息子夫婦の孫の難病の治療のために全財産を使い果たし、唯一助かる望みがオーストラリアでの治療と知ったロンドンに住む祖母が、渡航費を得るために風俗店で働くという物語。
 それまで風俗店などとは縁のない健全な人生を送ってきた壮年の女が、壁を挟んで手コキで男たちを射精させるが、なんと神の手を持っていて店のナンバーワンになってしまうというのが笑いどころ。イリーナという源氏名で、Irina Palmには順番待ちの行列ができるほど。
 日本からシステムを輸入したというオーナーの話がでてくるが、1970年頃だったか、大久保に似たような風俗店があって、そこのオバサンがやはり神の手を持っているという山本晋也のTVレポートがあったのを思い出す。
 設定はかなりキワモノっぽい作品だが、内緒で始めた仕事が息子にばれてしまってからは意外と感動的。母をなじる息子に対し、嫁は孫のために全霊を捧げた義母に感謝する。秘密がばれて開き直った祖母は友人たちにも仕事の内容を話し、彼女らの貞淑な仮面を剥がす。
 物語の流れから、ラストはいずれにせよ孫の生死まで描くと思いきや、孫を海外の治療に送り出し、風俗店のオーナーに会いに行ってキスするシーンで終わり。あくまでも、平凡で何の取柄もなく一生を過ごした女が、孫のためにすべてを捨ててなしたこと、という一点に収束させる。
 過去の傷への反動から風俗で稼ぎまくってマヨルカ島に移り住む夢を持つ風俗店オーナーが、女の一途さに打たれ、取柄のない者同士、二人が何となくいい仲になるのではという予感を漂わせ、心が温かくなるハートフル・コメディだが、やはり家族で見るには躊躇われる。 (評価:2.5)

製作国:アメリカ
日本公開:2008年10月11日
監督:シドニー・ルメット 製作:マイケル・セレンジー、ブライアン・リンス、ポール・パーマー、ウィリアム・S・ギルモア 脚本:ケリー・マスターソン 撮影:ロン・フォーチュナト 音楽:カーター・バーウェル
キネマ旬報:7位

犯罪ドラマではなく家族のドラマだという雰囲気だけに終わる
 原題は"Before the Devil Knows You're Dead"で、「悪魔が死を知る前に」の意。タイトル冒頭に“May you be in heaven half an hour before the devil knows you're dead.”(悪魔がおまえの死を知る30分前に天国に着いているように)というフレーズがあり、犯罪のドラマが幕を開けるという洒落た導入となる。邦題は、その犯罪が行われた時刻。
 もっとも映画はいきなりフィリップ・シーモア・ホフマンのぶよぶよした腹の後背位のシーンから始まり、かなり悪趣味。
 このホフマン演じる兄とイーサン・ホーク演じる弟が金に困り、父親の経営する宝石店を襲うという話で、盗られても保険に入っているから被害はないという、どこかで見たような設定。ところが想定外の母親殺人に発展してしまい、証拠隠滅を図ろうとしてさらに殺人を犯し・・・という物語。
 かなり杜撰な計画なので、すぐに警察に捕まりそうだが、その前に父親が息子の犯人に気づく。そこでホフマンと父親との確執が示唆され、これが単なる犯罪ドラマではなく家族のドラマなのだという雰囲気を漂わせるのだが、二人の確執は明らかにされないままに終わってしまうのが拍子抜けする。
 ルメットの演出は他でも空振りしていて、時系列に物語が進むのでも回想で物語が逆行するのでもなく、兄弟や父親のそれぞれの時間軸をオムニバス風に重ね合わせ、同じシーンがそれぞれの主観からくり返されるという構成を取っている。
 そのため、同一シーンが別のカメラアングルから映し出されるという面白い演出法をとっているが、ストーリーの復習にはなるが、何の効果も上げていない。一見、凝った感じと芸術映画風な臭いを漂わせるが、それだけに終わっていて、それぞれの人物の視点が活かされるまでには至っていない。
 シドニー・ルメット最後の作品。 (評価:2.5)

製作国:ス​ペ​イ​ン
日本公開:2008年6月14日
監督:ジャウマ・バラゲロ、パコ・プラサ 製作:フリオ・フェルナンデス 脚本:ジャウマ・バラゲロ、パコ・プラサ、ルイス・A・ベルデホ 撮影:パブロ・ロッソ

ドキュメンタリー手法のゾンビ映画の佳作
 ​『​ブ​レ​ア​・​ウ​ィ​ッ​チ​・​プ​ロ​ジ​ェ​ク​ト​』​の​系​譜​に​連​な​る​、​ド​キ​ュ​メ​ン​タ​リ​ー​手​法​の​ホ​ラ​ー​映​画​。​宣​伝​に​騙​さ​れ​た​評​判​倒​れ​の​作​品​が​多​い​が​、​怖​さ​と​い​い​臨​場​感​と​い​い​、​本​作​は​よ​く​で​き​て​い​る​。
​ ​消​防​士​た​ち​の​密​着​取​材​に​来​た​女​性​レ​ポ​ー​タ​ー​と​男​性​カ​メ​ラ​マ​ン​は​、​ア​パ​ー​ト​に​人​が​閉​じ​込​め​ら​れ​た​と​い​う​出​動​命​令​を​受​け​た​消​防​車​に​同​乗​。​消​防​士​、​警​官​と​建​物​内​に​入​る​が​、​な​ぜ​か​建​物​は​外​部​か​ら​封​鎖​さ​れ​て​閉​じ​込​め​ら​れ​て​し​ま​う​。​惨​劇​の​中​で​も​カ​メ​ラ​を​回​し​続​け​、​最​後​に​事​件​の​真​相​を​知​る​と​い​う​物​語​で​、​ジ​ャ​ン​ル​的​に​は​ゾ​ン​ビ​映​画​に​属​す​る​。
​ ​画​像​が​途​切​れ​る​、​画​質​が​粗​い​、​惨​劇​の​決​定​的​瞬​間​が​見​ら​れ​な​い​と​い​う​効​果​が​逆​に​恐​怖​感​を​煽​り​、​ラ​ス​ト​は​ラ​イ​ト​が​消​え​て​赤​外​線​で​撮​る​と​い​う​展​開​は​、​予​想​し​つ​つ​も​暗​所​・​閉​所​恐​怖​を​上​手​に​生​か​す​。​ホ​ラ​ー​ヒ​ロ​イ​ン​向​き​の​女​性​レ​ポ​ー​タ​ー​、​小​さ​な​女​の​子​も​ホ​ラ​ー​の​王​道​で​、​何​で​外​部​に​電​話​を​し​な​い​の​か​、​赤​外​線​カ​メ​ラ​は​準​備​が​良​す​ぎ​る​の​で​は​な​い​か​、​と​い​っ​た​設​定​的​な​問​題​を​別​に​す​れ​ば​、​最​後​ま​で​目​の​離​せ​な​い​展​開​。
​ ​T​V​の​二​人​は​最​後​に​生​き​残​る​の​か​否​か​が​、​終​盤​の​見​ど​こ​ろ​。 (評価:2.5)

魔法にかけられて

製作国:アメリカ
日本公開:2008年3月14日
監督:ケヴィン・リマ 製作:バリー・ソネンフェルド、バリー・ジョセフソン 脚本:ビル・ケリー 撮影:ドン・バージェス 美術:スチュアート・ワーツェル 音楽:アラン・メンケン

実写、セル、3Dアニメを組み合わせたザッツ・ディズニー
 原題"Enchanted"で、邦題の意。 ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ製作のミュージカル風映画で、ディズニー・プリンセスを主人公に、魔女、王子、動物を登場キャラクターに、実写、セル画風2Dアニメーション、3Dアニメーションを組み合わせた、ザッツ・ディズニー・ムービーといった作品に仕上げている。
 ディズニーアニメ風に立体絵本のページを捲るところから始まり、ディズニーアニメのお伽噺が始まる。プリンセスが魔女に騙されて滝壺に落ちると、そこは現代のニューヨーク。おとぎの国と現実社会を繋ぐ道路のマンホールから出た途端、2Dプリンセスは実写のプリンセス(エイミー・アダムス)に変身する。
 バツイチ子連れの弁護士(パトリック・デンプシー)に保護されるが、おとぎの国のままに振る舞うディズニー・プリンセスに弁護士が翻弄されるというコメディになっている。
 弁護士には婚約者(イディナ・メンゼル)がいて、プリンセスを追いかけて王子(ジェームズ・マースデン)と魔女(スーザン・サランドン)、その手先(ティモシー・スポール)もニューヨークにやって来るが、プリンセスと弁護士の間に恋が芽生えて、二人がめでたくゴールインというのもディズニー映画らしい予定調和。フラれた婚約者は王子のシンデレラとなり、おとぎの国に行く。
 物語のテーマは、お伽噺のハッピーエンドである"happily ever after"(永遠の幸せ)で、それは現実には存在しないというのが魔女の言い分。それに対して現実にお伽噺は存在すると証明するのがディズニー・プリンセスだが、エンディングの先は描かれない。
 作品全体がディズニーの世界観に対するディズニー自身によるパロディになっているが、テーマを肯定的に捉えているかどうかは、コメディに惑わされてよくわからない。王子と結婚した弁護士の婚約者が携帯電話を破棄するシーンがあるが、現実さえ忘れれば誰でもお伽噺のプリンセスになれるというメッセージとも皮肉ともとれる。
 よくできたコメディで、エイミー・アダムスのぶっ飛んだディズニー・プリンセスが楽しい。実写、セルアニメ、3Dアニメを組み合わせた実験的な作品でもあるが、シナリオ・映像ともに違和感がなく成功している。 (評価:2.5)

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師

製作国:アメリカ
日本公開:2008年1月19日
監督:ティム・バートン 製作:リチャード・D・ザナック、ウォルター・パークス、ローリー・マクドナルド、ジョン・ローガン 脚本:ジョン・ローガン 撮影:ダリウス・ウォルスキー 美術:ダンテ・フェレッティ 音楽:スティーヴン・ソンドハイム

出血シーンが出血大サービスのホラー風ミュージカル
 原題"Sweeney Todd: The Demon Barber of Fleet Street"で、邦題の意。スティーヴン・ソンドハイム、ヒュー・ウィーラーの同名ミュージカルが原作。
 理髪師のベンジャミン・バーカー(ジョニー・デップ)がスウィーニー・トッドを名乗って、悪徳判事ターピン(アラン・リックマン)に復讐をするというミュージカル仕立ての物語で、19世紀ヴィクトリア朝のロンドンの街並みをホラー風ファンタジーに描写するティム・バートンの映像が見どころ、ジョニー・デップ、アラン・リックマンが歌うというのが聴きどころとなっている。
 トッドが剃刀で首の大動脈を切って殺人を犯すのが最もゾクゾクするスリラーなのだが、歌いながら顔を剃るというのも相当ヒヤヒヤするもので、このバイアスのかかった恐怖が最大の見どころとなっている。
 ターピンはベンジャミンの美人妻ルーシー(ローラ・ミシェル・ケリー)に岡惚れ。ベンジャミンを無実の罪で島流しにして妻を手に入れるが、ルーシーは一人娘ジョアンナ(ジェイン・ワイズナー)を残して服毒してしまう。
 15年後に脱獄したベンジャミンが過去を知るパイ屋のラヴェット夫人(ヘレナ・ボナム=カーター)と組んで理髪店を開業。身寄りのない者を殺してパイにするという設定がエグイが、当時のロンドンの都市伝説が基になっている。
 ラヴェットがベンジャミンに恋し、結婚生活を夢見るが、ルーシーは狂人となっただけで死んでおらず、知らずにルーシーを手に掛けたベンジャミンが怒ってラヴェット夫人を殺し、ベンジャミンも死んでしまうという悲劇的というよりも破滅的ラストが良く出来ている。
 喉を掻き切った際の出血シーンも思い切りが良く、何度も血が噴き出す出血大サービスとなっている。 (評価:2.5)

製作国:アメリカ
日本公開:2007年6月16日
監督:デヴィッド・フィンチャー 製作:マイク・メダヴォイ、アーノルド・W・メッサー、ブラッドリー・J・フィッシャー、ジェームズ・ヴァンダービルト、シーン・チャフィン 脚本:ジェームズ・ヴァンダービルト 撮影:ハリス・サヴィデス 音楽:デヴィッド・シャイア
キネマ旬報:9位

映画としては反則で、見終わって未消化感が残る
 原題"Zodiac"は、連続殺人事件の犯人の自称で、黄道の12宮図のこと。1968~74年にサンフランシスコで起きたゾディアック事件について書かれた、サンフランシスコ・クロニクル紙の風刺漫画家ロバート・グレイスミスの同名ノンフィクションが原作。
 グレイスミスがクロニクル紙の漫画家となってすぐに事件に遭遇してからの事件究明の経緯を追いながら、取材記者、担当刑事がやがて事件から去っていき、記者の友人だったグレイスミスが事件の風化を怖れて、自らが本に残すために再取材していく過程を描く。
 2時間40分は長すぎて、容疑者を挙げながら捜査が混迷していく前半部分は次第に退屈になっていくが、グレイスミスが前面に出て来る後半はミステリータッチで面白くなってくる。
 もっとも、犯人を追いつめたかに見せながら、迷宮入りとなってしまうラストはどうにもすっきりしない終わり方で、迷宮入りの事件を扱った映画としてはいささか拍子抜けで、描き方が上手くない。
 事件から降りてしまった記者や担当刑事の描き方も中途半端で、事件に対しての二人の立ち位置がわからず、容疑者とされた映写技師や劇場主も曰くありげに描きながらそのまま放ったらかしという、映画としては反則といえる作り方。見終わって未消化感が残る。 (評価:2.5)

製作国:アメリカ
日本公開:2008年5月10日
監督:フランク・ダラボン 製作:フランク・ダラボン、リズ・グロッツァー 脚本:フランク・ダラボン 撮影:ロン・シュミット 音楽:マーク・アイシャム

解放のために進軍する戦車が虚しいホラー異色作
 原題は"The Mist"(靄)。スティーヴン・キングの同名小説が原作。
 mistとfog(霧)がどう違うかというと、視界1㎞未満が霧、それ以上が靄と気象的には言うらしいが、要は靄は霧よりも薄い。しかし、映画では10m先も見えないのでmistではなくfog。
"The Fog"(ザ・フォッグ、1980、2005リメイク)というホラー映画もあって、霧の中に魔物が潜むという点では良く似たシチュエーションだが、本作の方が霧よりも中身が濃い。
 嵐の後、湖に靄が浮かんでいるのが始まり。父子がスーパーマーケットで買い物をしていると、霧の襲われたという男が飛び込んできて、たちまち建物は霧に包まれる。霧の中から触手が伸びてきたり巨大イナゴ、人食い蜘蛛が現れるが、事態を招いたのが軍の機密研究にあるらしいことがわかる。店の客の中に狂信的なユダヤ教徒がいて、神の赦しを得るために扇動して生贄を捧げ始めるという、恐怖の中の人間の狂気をフランク・ダラボンは描く。
 父子と数人が店を出て車で避難するが、ガス欠となり霧の中で絶望のあまり・・・というのが物語。ラストは父だけが生き残るが、霧が晴れて魔物たちを掃討する軍の戦車が進軍してくるのに出会うという、掟破りのアンハッピーエンド。 『ショーシャンク』『グリーンマイル』『ウォーキングデッド』同様に、ダラボンは極限下の人間の裸の姿と愚かさ、嫌らしさを示すが、ラストシーンは脱力感・空虚感が残る異色作。
 父子と行動を共にする女ローリー・ホールデン、子供のもとに帰る母メリッサ・マクブライドは『ウォーキングデッド』のメインキャストに起用されている。
 昆虫系魔物との戦いのシーンも見どころ。 (評価:2.5)

製作国:アメリカ
日本公開:2008年9月6日
監督:ショーン・ペン 製作:ショーン・ペン、アート・リンソン、ビル・ポーラッド 脚本:ショーン・ペン 撮影:エリック・ゴーティエ 音楽:マイケル・ブルック、カーキ・キング、エディ・ヴェダー
キネマ旬報:4位

自分探しの旅を大人の態度で描く優等生映画
 原題"Into the Wild"で、字幕では「荒野へ」と訳されている。ジョン・クラカワーの同名のノンフィクション小説が原作。
 ジョージア大学をオールAで卒業した青年が、両親の望むハーバードのロースクールに進学せずに、放浪の旅に出て、アラスカで事故死するまでの実話を描く。
 兄の一生を妹が語るという形式を採りながら、放浪の旅の日記と並行して、妾の母、専横な父との間で不和が絶えなかった家庭事情が語られていく。
 裕福で物質主義の両親に反発する青年は、学歴・出世という世の中の価値観や物質主義を捨て、SuperTramp(スーパー放浪者)を名乗り、「世界の真理」を求めて自分探しの旅に出る。中西部の農場主、自由と自然な暮らしを求めるヒッピーやコミューンの仲間、一人暮らしの革職人の老人と出合いながら、なぜか最北の最終目的地アラスカを目指す。
 アラスカで荒野に放置された不思議なバスを見つけるが、トレーラーハウスのように使われていて、そこでの原始人のような狩猟生活を始めるが、増水した川に帰路を絶たれ、過って毒草を食べて衰弱死してしまう。
 映画では臨終に際して、両親の愛への回帰が描かれ、後味よく終わる。
 青年のよくある世間の価値観への反発と自分探しの旅の映画だが、ヒッピーや自然主義に対してショーン・ペンは一歩引いて、客観的若気の至り、通過儀礼といったように、大人の態度をとって、最終的には人生において最も大切なのは家族愛だという描かれ方をする。
 このキーパースンになるのが革職人の老人で、出征中に家族を交通事故で失い、隠遁生活を送るが、青年に技術を教えながら語らう。そして天涯孤独な老人は家族を得ることの大切さを悟り、青年を養子にしたいと申し出る。これが本作最大の見せ場で、青年はアラスカから帰ったら受け入れることを示唆するのだが、濁流に帰路を阻まれて約束を果たせずに終わる。
 ロードムービーの形式だが、荒野や列車、雪原といった風景を切り取った撮影は抜群に素晴らしい。
 テーマ的には予定調和で優等生的なのが物足りない。2時間半の長尺で、後半は、まだ続くの?感があって、もう少し短く編集してほしかった。 (評価:2.5)

告発のとき

製作国:アメリカ
日本公開:2008年6月28日
監督:ポール・ハギス 製作:ポール・ハギス、パトリック・ワックスバーガー、スティーヴ・サミュエルズ、ダーレーン・カーマニョ・ロケット、ローレンス・ベクシー 脚本:ポール・ハギス 撮影:ロジャー・ディーキンス 美術:ローレンス・ベネット 音楽:マーク・アイシャム

父娘ほどに歳の差のある男女のバディ・ムービーが魅力的
 原題"In the Valley of Elah"で、エラの谷での意。
 エラの谷はイスラエルの地名で、旧約聖書にこの地でダビデ王とゴリアテが戦った挿話がある。劇中、主人公のハンク(トミー・リー・ジョーンズ)が、サンダース刑事(シャーリーズ・セロン)の息子にこの挿話を語って聞かせる。
 物語は、イラクから休暇で帰還したハンクの息子が行方不明になり、基地近くで焼却された切断遺体で発見されるというもの。元軍警察のハンクが地元警察のサンダース刑事と共に事件を解明するが、背景に兵士の人間性を破壊しかねないイラク戦争の過酷な現実が描かれるというのが本作の眼目。実際に起きた事件をヒントに創られた反戦映画となっている。
 ミステリー映画として良く出来ていて、経験豊富なハンクの推理に導かれてサンダース刑事が、軍と警察の事なかれ主義を打破していく、父娘ほどに歳の差のある男女のバディ・ムービーとなっているのが魅力的。
 ハンクがトップレスバーの女に"madam"と呼びかけて、ここではそう呼ばないのよとたしなめられ"miss"と言い直すのが可笑しい。演じるフランシス・フィッシャーが若々しい胸をしているが、服を着て再登場するシーンは顔や手に皺が目立ち、出演時55歳だったというのも見どころか。
 アメリカでは国旗を逆さに掲揚すると救難信号になるというのもトリビアで、ラストシーンではアメリカそのものが危機にあるというメッセージが込められる。 (評価:2.5)

ヒトラーの贋札

製作国:ドイツ、オーストリア
日本公開:2008年1月19日
監督:シュテファン・ルツォヴィツキー 製作:ヨーゼフ・アイヒホルツァー、ニーナ・ボールマン、バベット・シュローダー 脚本:シュテファン・ルツォヴィツキー 撮影:ベネディクト・ノイエンフェルス 音楽:マリウス・ルーランド
アカデミー外国語映画賞

贋札はうたかたの如くカジノに消え去るのみ…で?
 アドルフ・ブルガーの実録『ヒトラーの贋札 悪魔の工房』が原作。ブルガーは映画の登場人物の一人でもある。ハリウッドにもドイツにもナチものの映画は多いが、これもベルンハルト作戦を題材にした一つ。アカデミー外国語映画賞を受賞している。
 強制収容所を題材にした映画というのは、それだけでドラマになる。だから、好んで映画の題材にされるが、この作品も悪逆無道なナチと可哀そうなユダヤ人、それに多少人間味のある親衛隊将校が絡むという定型を抜けていない。
 生きるために贋札造りに協力するか反抗するかというユダヤ人の葛藤が描かれるが、主人公はソロヴィッチではなく、彼を冷めた視線で見ている正義の人ブルガーだということに観終わって気づく。そのために葛藤するユダヤ人の心情や人物像の掘り下げが不十分。結局、「かつて強制収容所でユダヤ人技術者がポンドとドルの贋札を造らされていました、チャンチャン」という話以上のものにはなっていない。
 戦後、主人公がカジノで贋札を使い果たすというオチも、単なるニヒリズムにしか見えない。 (評価:2.5)

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団

製作国:イ​​​ギ​​​リ​​​ス、ア​​​メ​​​リ​​​カ
日本公開:2007年7月20日
監督:デヴィッド・イェーツ 製作:デヴィッド・バロン、デヴィッド・ハイマン 脚本:マイケル・ゴールデンバーグ 撮影:スワヴォミール・イジャック 音楽:ニコラス・フーパー

カエルおばさんのイメルダ・スタウントンが上手い
 ​原​題​は​"​H​a​r​r​y​ ​P​o​t​t​e​r​ ​A​n​d​ ​T​h​e​ ​O​r​d​e​r​ ​O​f​ ​T​h​e​ ​P​h​o​e​n​i​x​"​で​、​邦​題​の​意​。​原​作​は​J​.​K​.​ロ​ー​リ​ン​グ​の​同​名​児​童​小​説​で​、​シ​リ​ー​ズ​第​5​作​。​監​督​は​本​作​以​降​を​担​当​し​た​デ​ヴ​ィ​ッ​ド​・​イ​ェ​ー​ツ​。
​ ​セ​ド​リ​ッ​ク​が​殺​さ​れ​、​ヴ​ォ​ル​デ​モ​ー​ト​復​活​を​ハ​リ​ー​が​公​言​し​た​と​い​う​前​回​の​続​き​。​冒​頭​デ​ィ​メ​ン​タ​ー​に​ダ​ド​リ​ー​と​襲​わ​れ​、​魔​法​を​使​っ​た​こ​と​か​ら​魔​法​省​に​召​喚​。​学​校​の​新​任​教​授​は​魔​法​省​肝​煎​り​の​ア​ン​ブ​リ​ッ​ジ​で​、​学​校​で​は​嘘​つ​き​の​汚​名​を​そ​そ​ぐ​。​生​徒​た​ち​と​ダ​ン​ブ​ル​ド​ア​・​ア​ー​ミ​ー​を​結​成​し​、​ハ​リ​ー​が​先​生​と​な​る​が​、​ヴ​ォ​ル​デ​モ​ー​ト​に​心​を​読​ま​れ​て​い​る​た​め​、​ス​ネ​イ​プ​か​ら​閉​心​術​を​教​わ​る​。​し​か​し​シ​リ​ウ​ス​危​機​の​罠​に​は​ま​り​、​魔​法​省​で​予​言​を​手​に​入​れ​る​も​の​の​デ​ス​・​イ​ー​タ​ー​と​戦​い​で​・​・​・​ヴ​ォ​ル​デ​モ​ー​ト​と​の​戦​い​も​あ​る​。
​ ​話​は​要​領​よ​く​ま​と​め​ら​れ​て​い​て​、​原​作​を​読​ん​で​い​な​い​と​わ​か​ら​な​い​と​い​う​こ​と​は​な​い​。​デ​ィ​メ​ン​タ​ー​に​襲​わ​れ​る​シ​ー​ン​な​ど​禍​々​し​く​て​ダ​ー​ク​な​雰​囲​気​が​良​く​出​て​い​る​。
​ ​カ​エ​ル​お​ば​さ​ん​ア​ン​ブ​リ​ッ​ジ​の​イ​メ​ル​ダ​・​ス​タ​ウ​ン​ト​ン​が​、​嫌​ら​し​く​て​上​手​い​。​ス​ネ​イ​プ​の​ア​ラ​ン​・​リ​ッ​ク​マ​ン​、​ブ​ラ​ッ​ク​の​ゲ​イ​リ​ー​・​オ​ー​ル​ド​マ​ン​な​ど​配​役​は​豪​華​。
​ ​ト​ン​ク​ス​の​変​身​シ​ー​ン​や​双​子​の​ウ​ィ​ー​ズ​リ​ー​の​玩​具​の​シ​ー​ン​が​駆​け​足​で​、​じ​っ​く​り​見​ら​れ​な​い​の​が​残​念​。 (評価:2.5)

製作国:アメリカ
日本公開:2008年4月26日
監督:ポール・トーマス・アンダーソン 製作:ジョアン・セラー、ポール・トーマス・アンダーソン、ダニエル・ルピ 脚本:ポール・トーマス・アンダーソン 撮影:ロバート・エルスウィット 音楽:ジョニー・グリーンウッドッリ
キネマ旬報:2位

ダニエル・ルイスの鬱屈した演技がもやもやと尾を引く
 アプトン・シンクレアの1927年の小説" Oil! "が原作。映画のタイトルの"There Will Be Blood"は旧約聖書・出エジプト記に出てくる、神がエジプトにもたらす十の災いの一つに登場する言葉で、新共同訳では「血に浸るであろう」。
"God said to Moses, 'Tell Aaron to take his staff and extend his hand over the waters of Egypt - over their rivers, their canals, their reservoirs, and every place where water is kept - and shall turn into blood. There will be blood throughout all Egypt, even in wooden and stone .'"(主は更にモーセに言われた。「アロンに言いなさい。『杖を取り、エジプトの水という水の上、河川、水路、池、水たまりの上に手を伸ばし、血に変えなさい』と。エジプトの国中、木や石までも血に浸るであろう)
 劇中では主人公の石油王と聖霊派教会の牧師との宗教と世俗の対立という形で描かれる。
 金鉱や油田を掘っている山師の男の物語で、西部の油田の情報を手に入れて一帯の荒れ地を買占めて石油王となるエピソードが中心。土地の聖霊派教会の牧師が教会への寄付を条件に協力するが、狂信的な上に油田事故で息子が聴力を失ったことから、男は「神は無力か?」と牧師を殴ってしまう。
 パイプライン予定地の地主から土地を借りるため、スーパーリアリストの男は聖霊派教会の洗礼を受けるが、息子を寄宿学校に放逐したことで屈辱的な懺悔をさせられる。時が経ち、石油王となり息子と絶縁した男の下に牧師が無心にやってくると、男はこの時の仕返しとばかりに牧師がインチキ預言者で神が迷信だということを宣言させ、撲殺する。
 富をめざした孤独な男は、莫大な富と引き換えに再び孤独を手にする。男にとっては、金が無力だったのと同様に神も無力。そして貧窮して信心を捨てた牧師もまた、金の前に神は無力だったという結論で、何とも空しい終わり方をする。
 タイトルは何とも意味ありげで、石油は出エジプト記の水が血と化す災いの暗喩で、石油そのものが人間を狂わせる神の災いだとする解釈もできる。ゴールドラッシュに始まったアメリカンドリームという名の拝金主義は、映画のラストの時代である世界恐慌とアメリカ社会の崩壊へと繋がっていく。
 映画制作時、アメリカはサブプライムローンからバブル崩壊へと向かった年で、監督のポール・トーマス・アンダーソンは、" Oil! "に現代との相似を見たのかもしれない。翌年リーマン・ブラザーズ破綻による世界金融危機が起き、"There will be blood throughout all America"となる。
 アカデミー主演男優賞を獲得したダニエル・デイ=ルイスが、アメリカンドリームに心を奪われた男の孤独な物語を演じるが、その鬱屈した演技が映画終了後ももやもやと尾を引く。
 牧師役のポール・ダノは『リトル・ミス・サンシャイン』の色盲のお兄ちゃん。油田の爆発シーンは壮観。 (評価:2.5)

製作国:イギリス
日本公開:2008年4月12日
監督:ジョー・ライト 製作:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ポール・ウェブスター 脚本:クリストファー・ハンプトン 撮影:シーマス・マッガーヴェイ 音楽:ダリオ・マリアネッリ
キネマ旬報:9位

見どころはラスト数分のロマンティックな魔法
 原題は"Atonement"で邦題の意。イアン・マキューアンの同名小説が原作。
 第二次世界大戦前のイングランドの上流層の館が舞台。戯曲を書いている13歳の少女ブライオニーは、父親の温情でケンブリッジに通う使用人の息子(ジェームズ・マカヴォイ)に恋している。しかし、青年は子供の恋心に気づかず姉(キーラ・ナイトレイ)と相思相愛の仲。ある晩、ブライオニーは従妹ローラが男に押し倒されている現場を目撃し、それがマカヴォイだと偽証。マカヴォイは逮捕されて服役するが、戦争が始まって兵役で刑を免除される。一方の姉妹はともに従軍看護婦となるが、ナイトレイは恋人がフランスから祖国に戻った暁に、結婚することを誓い合う。
 時が過ぎブライオニーは作家となっているが、看護婦時代に書き始めていた真相を明かした小説を最後に引退を決意する。しかし小説には一つだけ嘘があってそれがタイトルの「つぐない」に繋がっている。
 本作は、このラスト数分のために作られた物語で、それがなければ平凡な悲恋物語でしかない。ラスト数分のロマンティックな魔法に掛るか掛らないかが評価の分かれ目で、個人的にはそれを「つぐない」とは思えなかったので、糖衣に包んだ魔法は解けてしまった。
 この魔法を巧みに掛ける年老いた魔女はヴァネッサ・レッドグレイヴ。
 基本はただの悲恋物語だが、演出は悪くないので通俗純愛物語が嫌いでなければそこそこ楽しめる。 (評価:2.5)

レミーのおいしいレストラン

製作国:アメリカ
日本公開:2007年7月28日
監督:ブラッド・バード 製作:ブラッド・ルイス 脚本:ブラッド・バード 音楽:マイケル・ジアッキノ

ラタトゥイユの隠し味はグルメへの痛烈な皮肉
 原題"Ratatouille"で、南仏の野菜料理、ラタトゥイユのこと。ピクサー・アニメーション・スタジオ製作の3Dアニメーション。
 パリの残飯漁り専門の鼠一族の毒見役レミーが、残飯ではなく美味しい料理を食べたいとレストラン・グストーの料理人になる物語。もちろん鼠が料理人になれるわけもなく、グストーの下働きのリングイニのコック帽に隠れ、リングイニを操って料理を作る。
 レミーが信奉する料理人がレストランの創業者グストーで、料理批評家イーゴに酷評され失意のうちに他界。リングイニがグストーの隠し子で、料理長のスキナーが店を継ぐためにリングイニの追い出しを図るというエピソードが絡む。
 鼠一族による大騒動の後にレストラン・グストーは衛生局によって閉鎖され、レミーとリングイニはビストロ・ラタトゥイユを新規開店するというハッピーエンドで、鼠たちのコミカルな活躍を見ているだけでも楽しい。
 もっとも、鼠が調理した料理をレストランで出すという違和感は冒頭からあって、味はともかく衛生面からはあり得ない話。そんなあり得ない話なのに何故わざわざ鼠を主人公に物語を作ったのかと考えながら見ているうちに、グルメ批判が隠されたテーマなのではないかと気づく。
 作品テーマでいえば、辛口料理評論家イーゴをもってして、本当においしい料理は高級フレンチではなく、ラタトゥイユのような家庭料理にあるという凡庸なグルメ批判なのだが、一部の評論家によって店の存亡までが左右されてしまうミシュランへの批判、そうした権威主義を振りかざす評論家への批判、店の評判を利用して冷凍食品などの大量生産による商業主義に走るスキナーのような料理人への批判も物語の隠し味に使われている。
 そして最も痛烈なグルメへの皮肉が、衛生上あり得ない鼠が作る料理であり、それをおいしいおいしいと言って食べるグルメな人々への批判となっている。 (評価:2.5)

TAXi4

製作国:フランス
日本公開:2007年8月25日
監督:ジェラール・クラヴジック 製作:リュック・ベッソン、ミシェル・ペタン、ロラン・ペタン 脚本:リュック・ベッソン 撮影:ピエール・モレル

機関銃とロケット弾で暴れまくる署長が見どころ
 原題同じ。マルセイユが舞台のカーアクション映画の第4作。
 ベルギーの怪物と呼ばれる凶悪犯フェニモア(ジャン=リュック・クシャール)が、コンゴへ移送途中にマルセイユ警察で一時身柄を預かることになるというお話。
 フェニモアの手下が奪還を企てデータベースを操作。エミリアン(フレデリック・ディーファンタル)がまんまと騙されて釈放し、一味はベルギー王立銀行の貸金庫に侵入・強奪。これに、貸金庫の機密書類を手に入れるため潜入捜査していたペトラ(エマ・シェーベルイ)が加わり、カンヌのアジトへ。
 ダニエル(サミー・ナセリ)のタクシーで一味を追跡していたとエミリアンが、アジトに乗り込み、警官隊も到着。最後はダニエルがフェニモアを捉えて一件落着となる。
 前三作に比べると漸くストーリーらしくなって、犯罪ものとして楽しめるようにはなっている。もっともその分、カーアクションなどのアクロバットシーンは大幅に減っているので、従来の『TAXi』のアクションを期待すると不満かもしれない。
 アバン・タイトルではサッカーのジブリル・シセが本人役で登場。ダニエルのタクシーでホテルからサッカー・フィールドまで送り届けてもらう。
 ダニエルが自分とエミリアンの子供の子守をしたり、義父のベルティノー将軍(ジャン=クリストフ・ブーヴェ)に預けたり等のギャグシーンが前三作より良く、アジトで麻薬を吸って機関銃とロケットランチャーで暴れまくる署長(ベルナール・ファルシー)の活躍が見どころとなっている。 (評価:2.5)

製作国:アメリカ
日本公開:2007年11月3日
監督:ラッセル・マルケイ 製作:ポール・W・S・アンダーソン、ジェレミー・ボルト、ロバート・クルツァー、サミュエル・ハディダ、ベルント・アイヒンガー 脚本:ポール・W・S・アンダーソン 撮影:デヴィッド・ジョンソン 音楽:チャーリー・クロウザー

クリーチャーも過ぎるとバイオハザードは何処いった
 原題"Resident Evil: Extinction"で、居住する邪悪:絶滅の意。カプコンの同名ビデオゲーム(英題、原題は『バイオハザード』)が原作。
 第1作のアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)登場シーンから始まり、マザーコンピュータに殺されてしまうという?のシーンから始まるが、中盤まで進むとそれがアリスのクローンだということがわかる。ミラ・ジョヴォヴィッチのヌードシーンもあるので、観客サービスを兼ねた導入か。
 前作からの続編で、ラクーンシティどころか全世界にゾンビが蔓延していて、本物のアリスはアンブレラ社の監視衛星を逃れてアメリカ西部の荒野をバイクで旅している。途中、ガソリンスタンドでアラスカがゾンビに汚染されていない安全な土地だと記されたノートを発見。
 北に向かう途中で、ウイルスによって強化されたカラスに襲われるキャラバンを助け、合流する。リーダーのクレア(アリ・ラーター)とアリスは補給のためにラスベガスに行くが、アリスを捕捉したアンブレラ社の罠に嵌り強化ゾンビの集団に襲われる。アリスは監視衛星を逆探知して秘密研究所に乗り込み、抗ウイルス剤で突然変異したした前作登場のアイザックス博士(イアン・グレン)の怪物タイラントと対決。
 二代目マザーコンピュータによって二人とも消去されるところをクローン・アリスによって助けられる。
 ラストシーンは、大量のクローンの胎児とともに、アリスがアンブレラ社東京本部に宣戦布告して終わる。
 強化カラスと新クリーチャーのタイラントが見どころだが、両者ともにCGに頼りすぎなのがやや物足りない。ホラーよりはサスペンスで怖がらせる演出で、クリーチャーも過ぎるとバイオハザードは何処いった感がある。
 アリスとクレアの女傑二人が今回も活躍。アリ・ラーターは超能力TVドラマ『HEROES』のニキ役。 (評価:2.5)

パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド

製作国:アメリカ
日本公開:2007年5月25日
監督:ゴア・ヴァービンスキー 製作:ジェリー・ブラッカイマー 脚本:テッド・エリオット、テリー・ロッシオ 撮影:ダリウス・ウォルスキー 音楽:ハンス・ジマー

デッドマンズ・チェストを観てないとチンプンカンプン
 原題は"Pirates of the Caribbean: At World's End"で、副題は「世界の果て」の意味。中世以前の世界観のように、世界の果ての海はカリブの海賊のアトラクションの滝となって流れ落ちている。
 本作は前作の完全な後編として作られているので、併せて観ないと話が全く分からない。前半はジャックを救出に行く話、後半は海賊取り締まりが強化されたために世界から海賊長が集まって東インド会社の大艦隊との決戦に挑む話。
 舞台はジャマイカのポート・ロイヤルからシンガポール、世界の果て、難破船島と移り、前編よりは筋もわかりやすく背景的な変化にも富む。第1作のバルボッサ船長(ジェフリー・ラッシュ)の再登場、女占い師(ナオミ・ハリス)の正体、幽霊船船長デイヴィ・ジョーンズの秘密、ウィルとエリザベスの運命など、伏線の回収編ということもあってそれなりに楽しめる。
 もっとも世界中から集まる海賊についての説明はほとんどなく、東インド会社がそれほど世界を股にかけていたのかとか、ギリシャ神話のカリプソが中国やインドの海賊に関係あるのか、という素朴な疑問はおいても、海賊をただ集めただけで物語には生かせていない。
 アクションは相変わらずのバトルロイヤルでわけがわからずに飽きる。ただ観ているうちに、これはディズニーアニメのドタバタアクションを実写+CGでやっているだけだと気づき、妙に納得する。
 ラストで幽霊船の船長が入れ換わるが、10年に1日しか陸に上がれないという設定で、10年経てば若者と娘はおじさんとおばさんになってしまうんだという感慨が頭を離れない。 (評価:2)

ライラの冒険 黄金の羅針盤

製作国:アメリカ
日本公開:2008年3月1日
監督:クリス・ワイツ 製作:デボラ・フォート、ビル・カラッロ 脚本:クリス・ワイツ 撮影:ヘンリー・ブラハム 音楽:アレクサンドル・デスプラ

ドラマもクライマックスもない多重世界SFファンタジー
 原題は"The Golden Compass"(黄金の羅針盤)。イギリスの作家フィリップ・プルマンの児童小説"His Dark Materials"シリーズ第1部"Northern Lights"(米題"The Golden Compass")が原作。Dark Materialsは作中に登場する暗黒物質ダスト(dust)、Northern Lightsは北極光(オーロラ)のこと。
 多重世界を描くSFファンタジーで、3部作をもって全体の世界観がサスペンス風に描かれていくが、ダニエル・クレイグやニコール・キッドマンら豪華キャストにも拘らず、カトリック連盟のボイコット運動や興行不振から1作で終わってしまった。作中に登場する教権機関がバチカン、ダストが原罪、ライラがイブを暗喩している。
 第1部のライラの宇宙では、人は肉体とダイモンという動物姿の魂に分離している。教権機関の一部が、ダストに染まる前に子供からダイモンを切り離す実験をクマが支配する北欧の地で行っていて、ジプシーの暗喩ジプシャンの子を攫っている。友達を助けるべく、ライラはジプシャンとともに向かうという話で、魔女も登場する。
 観念的で複雑な設定を説明しながら、ストーリーはダイジェスト的に駆け足で進むため、物語に余裕がなく、エピソード的な遊びもない。キャラクターは記号化していて、ストーリーをただなぞるだけに終わっていて、ドラマもなければクライマックスもなく、アカデミー視覚効果賞を受賞した異世界的映像を楽しむくらいしか見所がない。 (評価:2)

ダイ・ハード4.0

製作国:アメリカ
日本公開:2007年7月28日
監督:レン・ワイズマン 製作:ジョン・マクティアナン 脚本:マーク・ボンバック 撮影:サイモン・ダガン 音楽:マルコ・ベルトラミ

12年経っても変わらないコンセプトに妙にホッとする
 原題"Live Free or Die Hard"で、「自由に生きるか、さもなくばDie Hardを」の意。ニューハンプシャー州の標語"Live Free or Die"のもじりで、独立戦争の際に生れたもの。Die Hard粘り強く耐えてなかなか死なないの意。
 マクレーン刑事の敵はイギリスではなくサイバーテロ組織で、アメリカ独立記念日前夜に攻撃を受けるが、前作『ダイ・ハード3』から12年が経過して、ブルース・ウィリスもいささか金属疲労気味。
 サイバーテロを相手にしなければならないが、アナログ人間のため戦場はやっぱりエレベーターとかビル内にならざるを得ず、サイバー空間外で相変わらずの捨て身のアクションで戦う。
 このアナログ感覚は作品全体に浸透していて、シナリオも設定もサイバーとは名ばかりの噴飯もの。電気・交通・通信等々のインフラ制圧も相当空想的で、出来の悪い『24-TWENTY FOUR-』といった感じ。天然ガスのパイプラインを使ったビル攻撃など、炎が全米を横断するパイプラインを走っていってマクレーン刑事のいるビルに到達、爆発・炎上するという話に目が点になる。
 マクレーン刑事の最終目的は娘の救出で、サイバーテロリストの目的が大金という、12年経っても変わらないコンセプトに飽きれるというか妙にホッとしてしまう。 (評価:2)

製作国:アメリカ
日本公開:2010年1月30日
監督:オーレン・ペリ 製作:オーレン・ペリ、ジェイソン・ブラム 脚本:オーレン・ペリ

あまりのパラノーマルに早送りして見たくなる低予算ホラー
 製作費15000ドルの自主製作映画。クオリティも製作費に相応しいか、それ以下。口コミで評判が伝わり北米での興収は1億ドルを超えたが、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』を思い出させる作品。あれも広告宣伝に騙された。
 個人的には出来の悪い映画でも失敗した原因を考えながら見るので、時間を無駄にしたと感じる映画はほとんどないが、これはその一つ。途中からは早送りで観た。
 同棲カップルの女の子に子供の時から憑いている霊がいて、同棲相手がその正体を突き止めようと寝室にビデオカメラを仕掛けて撮影するという話。退屈なシーンが延々と続く上に、霊の正体もポルターガイストなのか幽霊なのか悪魔なのかはっきりせず、女の子は夢遊病になるは、霊に引っ張って行かれるはで無茶苦茶。昔から霊とはお友達だったはずなのに、女の子はちょっとのことでギャーギャー騒ぎ立て、デイ・トレーダーの青年は撮影に夢中でちっとも仕事をしない。
 最悪なのは少しも怖くないことで、女の子も可愛くない。寝室にカメラを仕掛けたのだから、せめてベッドシーンで楽しませてほしかった。
 原題は"Paranormal Activity"(超常的な活動)。ドキュメンタリーの手法を使ったフィクションで、シリーズ4作まで作られているのがparanormal、いやabnormal。 (評価:1)


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