海月衛 映画帖
~映画の大海原をたゆたう~

外国映画レビュー──1918年

担へ銃(チャップリンの兵隊さん)

製作国:アメリカ
日本公開:1919年7月
監督:チャールズ・チャップリン 製作:チャールズ・チャップリン 脚本:チャールズ・チャップリン 撮影:ローランド・トザロー

反戦もギャグもなまくら刀で切れ味悪く散漫
 原題"Shoulder Arms"で、邦題の意。担銃(になえつつ)は小銃を肩にかつぐこと、その号令。
 第一次世界大戦中の制作で、チャップリンが戦争に参加したら…という想定のサイレント映画で、戦争に協力しているようでそうでもないという微妙な戦争映画。
 新兵訓練から始まり、西部戦線でのドイツとの塹壕戦、斥候任務をコメディで茶化し、敵を捕虜にして活躍するが、すべてはテントで見た夢というオチ。
 戦争を笑いのネタにするという時点で反戦ないしは厭戦的だが、直接的な戦争批判はないという、チャップリンらしいギリギリの塀の上を歩いている感じがする。
 オチコボレ新兵ながらも本当は軍隊をバカにしているのでは、と思わせるところもあり、実戦は夢の中の話にして戦争や軍隊の批判にはならないようにしている。
 塹壕の中が水浸しになって、碌に眠れないままに出撃という軍隊の非人間性も笑いでオブラートに包み、捕虜にしたドイツ兵とは仲良く上官はバカにするという、ドイツ軍を利用した軍隊批判など、表立って反戦映画にならないようにうまく工夫しているのだが、その分散漫な印象は免れず、ギャグも今一つで、次第に飽きてくる。
 最後の夢オチもなまくら刀で、切れ味の悪さを上塗りしている。
 フランス娘役でエドナ・パーヴァイアンス。 (評価:2)