TVドラマレビュー(外国)──2001年~
制作:イギリス、スウェーデン
形式:TVシリーズ
放送:2008年(日本 2011年)
監督:フィリップ・マーティン、ニオール・マコーミック 脚本:Richard Cottan、Richard McBrien
殺人を止められないメタボで成人病の冴えない刑事
BBCで放映されたTVの第1シリーズ。ヘニング・マンケルのスウェーデンの小説、クルト・ヴァランダー警部シリーズが原作。
主人公のヴァランダーは壮年の冴えない刑事で、ワーカー・ホリックで妻には逃げられ、画家の父親とも上手くいかず、唯一の慰めは一人娘のリンダだけ。しかしリンダに求めるのは母性愛で、娘にあやされて涙を流すという、どうしようもなくダメな父親。
では仕事は有能かというと一応ラストには事件を解決するが、解決までには死屍累々。捜査体制や方法にも穴が多い。『刑事コロンボ』は見かけは冴えなくても中身は聡明というキャラクターだが、ヴァランダーの場合は外見も中身も冴えない。その上、体はぶよぶよ、肌はたるみ、いつも疲れていて、#3では糖尿病が発覚する。 そのどうしようもない凡庸さが、男には等身大の共感を呼び、女には安心感を与える。
TV映画として観た場合、ヴァランダーが有能でない分、事件解決までのテンポが悪く、中盤で中だるみになって退屈する。演出のせいばかりとは思えないが、90分は長く、60分程度にコンパクトにまとめた方が良かった。 舞台となるスウェーデンで撮影された映像がいい。高度の低い太陽からの陰影のある景色が禍々しい事件に陰鬱な色を添える。ケネス・ブラナーのダメ親父ぶりも見どころ。
スウェーデンは近年犯罪が増加し、移民政策の失敗だと言われていることを押さえておくと、観る時の理解を助ける。
#1"Sidetracked"(目くらましの道):原作は"Villospår"で、少女の焼身自殺をきっかけに元外務大臣らが斧で頭を割られ頭皮を剥がされる連続殺人が発生。少女買春の復讐劇で、5人死亡。
#2"Firewall"(混沌の引き金):原作は"Brandvägg"で、タクシー運転手がふたりの少女に刺殺される事件を発端とするサイバーテロ事件。ヴァランダーの恋物語もある。5人が死亡。
#3"One Step Behind"(友の足跡):原作は"Steget efter"で、夏至祭りの男女失踪事件を発端に、ヴァランダーの親友の刑事が射殺される。理由なき殺人で8人が死亡。 (評価:2.5)
形式:TVシリーズ
放送:2008年(日本 2011年)
監督:フィリップ・マーティン、ニオール・マコーミック 脚本:Richard Cottan、Richard McBrien
BBCで放映されたTVの第1シリーズ。ヘニング・マンケルのスウェーデンの小説、クルト・ヴァランダー警部シリーズが原作。
主人公のヴァランダーは壮年の冴えない刑事で、ワーカー・ホリックで妻には逃げられ、画家の父親とも上手くいかず、唯一の慰めは一人娘のリンダだけ。しかしリンダに求めるのは母性愛で、娘にあやされて涙を流すという、どうしようもなくダメな父親。
では仕事は有能かというと一応ラストには事件を解決するが、解決までには死屍累々。捜査体制や方法にも穴が多い。『刑事コロンボ』は見かけは冴えなくても中身は聡明というキャラクターだが、ヴァランダーの場合は外見も中身も冴えない。その上、体はぶよぶよ、肌はたるみ、いつも疲れていて、#3では糖尿病が発覚する。 そのどうしようもない凡庸さが、男には等身大の共感を呼び、女には安心感を与える。
TV映画として観た場合、ヴァランダーが有能でない分、事件解決までのテンポが悪く、中盤で中だるみになって退屈する。演出のせいばかりとは思えないが、90分は長く、60分程度にコンパクトにまとめた方が良かった。 舞台となるスウェーデンで撮影された映像がいい。高度の低い太陽からの陰影のある景色が禍々しい事件に陰鬱な色を添える。ケネス・ブラナーのダメ親父ぶりも見どころ。
スウェーデンは近年犯罪が増加し、移民政策の失敗だと言われていることを押さえておくと、観る時の理解を助ける。
#1"Sidetracked"(目くらましの道):原作は"Villospår"で、少女の焼身自殺をきっかけに元外務大臣らが斧で頭を割られ頭皮を剥がされる連続殺人が発生。少女買春の復讐劇で、5人死亡。
#2"Firewall"(混沌の引き金):原作は"Brandvägg"で、タクシー運転手がふたりの少女に刺殺される事件を発端とするサイバーテロ事件。ヴァランダーの恋物語もある。5人が死亡。
#3"One Step Behind"(友の足跡):原作は"Steget efter"で、夏至祭りの男女失踪事件を発端に、ヴァランダーの親友の刑事が射殺される。理由なき殺人で8人が死亡。 (評価:2.5)
刑事ヴァランダー シーズン2
形式:TVシリーズ
放送:2010年(日本 2013年)
監督:Hettie MacDonald、Andy Wilson、Aisling Walsh 脚本:Richard Cottan、Simon Donald
BBCで放映されたTVの第2シリーズ。ヘニング・マンケルのスウェーデンの小説、クルト・ヴァランダー警部シリーズが原作。全体レビューはシーズン1参照。
スウェーデンの風景は寒々しいが水が豊かで、美しい風景は見どころのひとつ。
ヴァランダーの勤務するイースタ警察署は、毎回重大事件が起きる割には慢性的に人手不足。そのせいか捜査は甘く、鑑識も穴だらけ。ヴァランダーが乗り出して一から捜査を始めると事件は解決に向かうが、ヴァランダーが特別優秀なわけでもなく、ほかの署員が無能だからヴァランダーが優秀そうに見える。ヴァランダーの推理も直観的で強引、推理物としては物足りない。
#5ではヴァランダーは糖尿病に精神疾患まで患い、父と娘との確執も広がり、推理ドラマというよりは職業・刑事の人情ドラマ。#6では別居中の妻も登場し、男としては同病相哀れむという見方がベスト。
#4"Faceless Killers"(殺人者の顔):原作は"Mördare utan ansikte"で、老農夫婦の殺人事件を追う。今際に妻が残した言葉"f-"が"foreigner"を指すのではないかという捜査情報が新聞に漏れ、移民殺害事件へと発展する。4人が死亡するが、内1人はヴァランダーが射殺する容疑者。
#5"The Man Who Smiled"(笑う男):原作は"Mannen som log"で、休暇中のヴァランダーに友人の弁護士が父親の交通事故死の調査依頼に訪れるところから物語は始まる。少女を轢死させて免職になった元警官、臓器密売が絡んで、ヴァランダーが捜査に復帰する。5人死亡、1人重篤、1人重傷。
#6"The Fifth Woman"(五番目の女):原作は"Den femte kvinnan"で、バードウォッチャーの男が竹槍の罠に落ちて死ぬ。続いて花屋が行方不明となり、DV絡みの連続殺人へと発展。5人死ぬが、1人はヴァランダーの父で自然死。 (評価:2.5)
刑事ヴァランダー シーズン3
形式:TVシリーズ
放送:2012年(日本 2016年)
監督:Toby Haynes、Esther Campbell、Charles Martin 脚本:Peter Harness
BBCで放映されたTVの第2シリーズ。ヘニング・マンケルのスウェーデンの小説、クルト・ヴァランダー警部シリーズが原作。
前シリーズまで介護していたヴァランダーの父、娘は登場せず、いきなりコブ付きの女と新居に引っ越してくるところからシーズン3は始まる。女はワーカ・ホリックのヴァランダーの良き理解者だが、仕事しかできないヴァランダーは別居中の妻同様に彼女を苦しめてしまうことを恐れるというドツボに嵌った人間を演じる。#8では、ラトビア捜査官の未亡人ともいい関係になり、#9では隣家の不倫妻も出てきて結構もてるが、同棲していた母子は#8以降は登場せず、やもめ生活に戻った説明がないのが残念。
ヴァランダーの画家の老父は死んだらしいが説明もなく、#9で結婚したリンダが再登場しても別居妻には触れられずじまいで、糖尿病も忘れられて、プライベートが物足りない。
事件のエピソードは面白く、北欧の寒々とした映像もいいのだが、何となく雰囲気ばかりでヴァランダーそのものが北欧の空気に色褪せた感じ。
#7"An Event in Autumn"(弔いの庭):原作はマンケルの短編"THet graf"で、ヴァランダーが新しい彼女と引っ越した家の庭から10年前に埋められた女性の白骨死体が発見される。どうやら隣家の親爺がヴァランダーに見つけてほしかったらしく、死体が家出少女や娘に売春させている極悪夫婦の乳母とわかる。一方、ポーランド航路で妊娠女性が船から転落する事件が起き、これも友達と売春をしていたことがわかり、二つの事件が結びつく。3人が殺され、同僚の女刑事が重体。
#8"The Dogs of Riga"(リガの犬たち):原題は"Hundarna i Riga"で、ボートに乗せられた惨殺死体が流れ着き、ラトビアから捜査官がやってきて、ギャングが絡む麻薬密輸だとわかる。直後に捜査官が殺され、ヴァランダーが首都リガに派遣される。捜査官の妻に接触し、捜査官がギャングと警官との癒着を内偵していたことを知るが、逆にリガ警察から監視されることになる。4人が殺され、警官1人が死亡。
#9"Before the Frost"(罪の償い):原作はシリーズ番外編"Innan frosten"。ヴァランダーの家にかつての隣家の娘アンナが助けを求めるように訪れるがすぐに姿を消す。娘のリンダとともにアンナの消息を探すうちに、アンナが彼女の死んだ父が嵌っていた超保守的宗派の信者だった事実にたどり着く。白鳥とともに婦人が焼殺される事件、信者の焼身自殺と続き、死んだはずの父まで現れ、アンナに中絶を強要した母ともども一家で業火に焼かれようとする。 (評価:2.5)
刑事ヴァランダー シーズン4
形式:TVシリーズ
放送:2016年(日本 2018年)
監督:ベンジャミン・カロン 脚本:ジェームズ・ドーマー、ピーター・ハーネス
BBCで放映されたTVの第4シリーズにしてファイナル。ヘニング・マンケルのスウェーデンの小説、クルト・ヴァランダー警部シリーズが原作。
前シリーズから4年を経て制作されたが、ケネス・ブラナーの老いが顕著。体はぶよぶよで動さも鈍く、とても刑事は務まりそうにない。年齢以上に老けて見えるが、それにふさわしくヴァランダーがアルツハイマーに罹って引退を意識するという、終幕に相応しい黄昏話となっている。
黄昏というよりは白夜の寒々しい風景が相変わらず美しく、ヴァランダーの孤独と寂寥感を盛り上げる。
#1"The White Lioness"(白い雌ライオン):原作は"Den vita lejoninnan"。国際警察会議出席のため南アフリカを訪れていたヴァランダーが、現地で起きたスウェーデン女性の失踪事件の協力を頼まれたところが、つい単独捜査にのめり込んでしまう。南ア警察の女性刑事が相棒とはなるが、治安も悪く道不案内な南アで車を乗り回し、一人で黒人の町に入り込んでしまうという超人ぶり。それでも体力の衰えは隠せず、スタントを使うところが寂しい。黒人の貧困を背景に安い報酬で雇われた少年が暗殺訓練をスウェーデン女性に目撃されて拉致。少年を追っていくうちに土地開発の利権に絡んだ反対派の議員候補暗殺計画が背後にあることを知り、暗殺を阻止。黒幕の南ア警察幹部の自殺を入れて白人2、黒人1が死亡。
#2"A Lesson in Love"(愛の形):冒頭でヴァランダーが強盗に頭を殴られ、ときどき記憶を失う症状が出て、ラストで脳検査を受ける。事件は、野原で女性の刺殺体が発見され、彼女から借りた農場の追立てを喰らっていたバイカーたちが容疑者に上がる。行方不明になっている女性の娘と交際していたバイカー・リーダーの息子が凶器を持っていたことから逮捕するが完全黙秘。娘は一時期里子に出され母との仲が良くなかった事実から、娘の行方を追う。珍しく死亡者は1名。
#3"The Troubled Man"(失われゆくもの):原作は"Den orolige mannen"。娘リンダの義父が行方不明となり、義母が自殺。ヴァランダーは80年のソ連潜水艦領海侵犯事件で義父がスウェーデン海軍潜水艦の艦長として関係し、義母がソ連スパイだった可能性に突き当たる異色な展開。並行してヴァランダーがアルツハイマーとなり、結末も霧の中というよりは、曖昧な記憶のままに終わる。
ラストは、娘が介護に名乗りを上げるという最終回らしい話になっている。 (評価:2.5)
制作:アメリカ
形式:TVシリーズ
放送:2008年
推理ドラマというよりは同病相哀れむ、人情刑事ドラマ
ケーブル局AMCで放送されたTVシリーズの第1シリーズ全7話。#1はパイロット版で10分長い。
高校の化学の先生が肺癌になって僅かな余命を宣告され、趣味と医療費のためにメタンフェタミン製造に走り、麻薬密売の元締めを殺してしまい、悪の深みに嵌るという物語。
原題の"Breaking Bad"は俗語で、悪事に手を染める。
メタンフェタミンは、日本ではヒロポンの商標名で知られている。劇中では、meth、crystal methと呼ばれている。methはmethamphetamineの省略形。crystalは結晶が水晶に似ていることから。
主人公のホワイトは研究所では結晶学の神様のような存在だったが、なぜか薄給の高校教師に身をやつし、フットボールで障碍児となった高校生の息子、妻の腹の中の娘のために、洗車場でバイトするという情けなさ。登場シーンも腹のぶよぶよしたパンツ姿で、負け犬がいかに野犬となって一泡吹かせるかという、ネガティブなキャラクターが共感を呼ぶ。
ホワイトがドラッグ製造や神経ガス、死体処理に化学オタクぶりを発揮するところが見どころだが、前半では癌を巡るシリアスな医療問題も絡み、ドラマの方向性がふらつく上に展開もかったるい。
もっとも悪に吹っ切れて以降のホワイトの暴走ぶりが小気味よく、 ブライアン・クランストンの頭を丸めた気弱な悪人面が魅力的。 (評価:2.5)
形式:TVシリーズ
放送:2008年
ケーブル局AMCで放送されたTVシリーズの第1シリーズ全7話。#1はパイロット版で10分長い。
高校の化学の先生が肺癌になって僅かな余命を宣告され、趣味と医療費のためにメタンフェタミン製造に走り、麻薬密売の元締めを殺してしまい、悪の深みに嵌るという物語。
原題の"Breaking Bad"は俗語で、悪事に手を染める。
メタンフェタミンは、日本ではヒロポンの商標名で知られている。劇中では、meth、crystal methと呼ばれている。methはmethamphetamineの省略形。crystalは結晶が水晶に似ていることから。
主人公のホワイトは研究所では結晶学の神様のような存在だったが、なぜか薄給の高校教師に身をやつし、フットボールで障碍児となった高校生の息子、妻の腹の中の娘のために、洗車場でバイトするという情けなさ。登場シーンも腹のぶよぶよしたパンツ姿で、負け犬がいかに野犬となって一泡吹かせるかという、ネガティブなキャラクターが共感を呼ぶ。
ホワイトがドラッグ製造や神経ガス、死体処理に化学オタクぶりを発揮するところが見どころだが、前半では癌を巡るシリアスな医療問題も絡み、ドラマの方向性がふらつく上に展開もかったるい。
もっとも悪に吹っ切れて以降のホワイトの暴走ぶりが小気味よく、 ブライアン・クランストンの頭を丸めた気弱な悪人面が魅力的。 (評価:2.5)
制作:Gobi Productions
形式:TVムービー
放送:2010年7月17日
監督:ジェフリー・スコット・ランドー 脚本:ラウル・イングリス 撮影:トム・ハーティング 音楽:クリストファー・ニッケル
怖くないゴブリン以下、押しなべてB級
原題"Goblin"。Syfyで放送。
おそらくアメリカの田舎町にやってきた一家が、呪われた町でゴブリンに襲われるというもので、何となく気の抜けたコーラみたいなホラー。
町が呪われた原因というのがサウィン祭で魔女の子供が焼き殺され、怒った魔女がゴブリンとして復活させたためで、その後ゴブリンが町に祟って、ハロウィンには赤ん坊が連れ去られてしまうというもの。
そこにやってきたのが赤ん坊を連れた一家で、赤ん坊と姉と父は助かるものの関係者がみんな死んでしまうという展開が凄い。町は秘境なのか、一家がやってきた理由というのが町の開発計画のために訪れるというもので、整合性は考えない方が精神的に良い。
そもそもケルトのサウィン祭にまつわる因縁が北米というのもネイティブアメリカンを無視した話で、200年前の焚火の跡が今も残っているというのもよくわからない。
ゴブリンも凶悪なだけで怖くなく、スプラッターシーンも結果の描写だけという、設定、シナリオ、カメラワーク、演出、俳優など押しなべてB級という残念な作品。 (評価:1.5)
形式:TVムービー
放送:2010年7月17日
監督:ジェフリー・スコット・ランドー 脚本:ラウル・イングリス 撮影:トム・ハーティング 音楽:クリストファー・ニッケル
原題"Goblin"。Syfyで放送。
おそらくアメリカの田舎町にやってきた一家が、呪われた町でゴブリンに襲われるというもので、何となく気の抜けたコーラみたいなホラー。
町が呪われた原因というのがサウィン祭で魔女の子供が焼き殺され、怒った魔女がゴブリンとして復活させたためで、その後ゴブリンが町に祟って、ハロウィンには赤ん坊が連れ去られてしまうというもの。
そこにやってきたのが赤ん坊を連れた一家で、赤ん坊と姉と父は助かるものの関係者がみんな死んでしまうという展開が凄い。町は秘境なのか、一家がやってきた理由というのが町の開発計画のために訪れるというもので、整合性は考えない方が精神的に良い。
そもそもケルトのサウィン祭にまつわる因縁が北米というのもネイティブアメリカンを無視した話で、200年前の焚火の跡が今も残っているというのもよくわからない。
ゴブリンも凶悪なだけで怖くなく、スプラッターシーンも結果の描写だけという、設定、シナリオ、カメラワーク、演出、俳優など押しなべてB級という残念な作品。 (評価:1.5)
制作:英国放送協会
形式:TVシリーズ
放送:2010年(日本 2011年)
演出:Paul McGuigan、Euros Lyn 脚本:スティーヴン・モファット、スティーヴ・トンプソン、マーク・ゲイティス 音楽:David Arnold、Michael Price
シャーロックは犯罪オタクという新解釈現代版
BBC製作のTVシリーズ。シリーズ1は#1"A Study in Pink"、#2"The Blind Banker"、#3"The Great Game"で、それぞれ原作の「緋色の研究」「恐怖の谷+踊る人形」「ブルースパーティントン設計書」に対応している。
これまでグラナダTV版ジェレミー・ブレットの『シャーロック・ホームズの冒険』(Sherlock Holmes;1984-94・全41話)が映画を含めて他の映像化を寄せ付けなかったが、ベネディクト・カンバーバッチの新シリーズは、古典のグラナダ版に対し、設定を現代に置き換えて新解釈のシャーロック像を提示、その試みはかなりの点で成功している。
一番にキャラクターの造形が良く、シャーロックは天才だが社会性に欠陥のある犯罪オタク。最初はジェレミー・ブレットの知性的なシャーロック像とかけ離れていて違和感があったが、現代に生きていれば意外と妥当なのではないかと思えてくる。ホームページ、ブログ、ゲイと要素も現代的で、映像的にもデジタル感が出ている。話の展開、とりわけシャーロックの立て板に水の推理場面は、台詞をよく聞いていないと付いていけない。結構独りよがりの推理だったりするが、それを考える暇を与えないというスピードある演出は各話90分を飽きさせない。会話にはジョークも多いので、できれば字幕版が楽しむ方が良い。
#1は、ワトソンとシャーロックの出会いと連続自殺事件の謎。#2は、中国の犯罪組織"Black Lotus"と戦う暗号ミステリー。#3は、爆弾魔との連続パズルゲームでモリアーティも登場する。 (評価:3.5)
形式:TVシリーズ
放送:2010年(日本 2011年)
演出:Paul McGuigan、Euros Lyn 脚本:スティーヴン・モファット、スティーヴ・トンプソン、マーク・ゲイティス 音楽:David Arnold、Michael Price
BBC製作のTVシリーズ。シリーズ1は#1"A Study in Pink"、#2"The Blind Banker"、#3"The Great Game"で、それぞれ原作の「緋色の研究」「恐怖の谷+踊る人形」「ブルースパーティントン設計書」に対応している。
これまでグラナダTV版ジェレミー・ブレットの『シャーロック・ホームズの冒険』(Sherlock Holmes;1984-94・全41話)が映画を含めて他の映像化を寄せ付けなかったが、ベネディクト・カンバーバッチの新シリーズは、古典のグラナダ版に対し、設定を現代に置き換えて新解釈のシャーロック像を提示、その試みはかなりの点で成功している。
一番にキャラクターの造形が良く、シャーロックは天才だが社会性に欠陥のある犯罪オタク。最初はジェレミー・ブレットの知性的なシャーロック像とかけ離れていて違和感があったが、現代に生きていれば意外と妥当なのではないかと思えてくる。ホームページ、ブログ、ゲイと要素も現代的で、映像的にもデジタル感が出ている。話の展開、とりわけシャーロックの立て板に水の推理場面は、台詞をよく聞いていないと付いていけない。結構独りよがりの推理だったりするが、それを考える暇を与えないというスピードある演出は各話90分を飽きさせない。会話にはジョークも多いので、できれば字幕版が楽しむ方が良い。
#1は、ワトソンとシャーロックの出会いと連続自殺事件の謎。#2は、中国の犯罪組織"Black Lotus"と戦う暗号ミステリー。#3は、爆弾魔との連続パズルゲームでモリアーティも登場する。 (評価:3.5)
SHERLOCK/シャーロック シーズン2
形式:TVシリーズ
放送:2012年(日本 2012年)
演出:Paul McGuigan、Toby Haynes 脚本:スティーヴン・モファット、マーク・ゲイティス、スティーヴ・トンプソン 撮影:Fabian Wagner 音楽:David Arnold、Michael Price
BBC製作のTVシリーズ。シリーズ2は#4"A Scandal in Belgravia"、#5"The Hounds of Baskerville"、#6"The Reichenbach Fall"で、それぞれ原作の「ボヘミアの醜聞」「バスカヴィル家の犬」「最後の事件」に対応している。
前シリーズが成功して制作費が増えたのか、シリーズ2はシナリオも映像もパワーアップしている。
#4は#3の引きから始まり、アイリーン・アドラーが"女王様"で登場。大胆なヌードと色気を披露する一方、シャーロックもノーパンでバッキンガムにやってくるといったやや大人向きの話。法医学者のモリーも負けずに可愛らしさで対抗する。マイクロフトにCIA、ゲリラ、モリアーティも絡む複雑な話で、1回見ただけでは話が良くわからない。シャーロックの携帯の着信音と、アイリーンのパスワードがお洒落。
#5は原作同様、バスカヴィル家の犬の正体が物語を引っ張るが、遺伝子工学といった最新科学も取り入れられたエピソード。ホラー的な要素もあってサスペンスフル。キャラクターもこなれてきて、シャーロックと女好きジョン・ワトソンの会話も快調。
#6はモリアーティが仕掛ける罠によってシャーロックが追い詰められていくという、見ごたえある頭脳戦の話。シャーロックとジョン、レストレード警部、ハドソン夫人、モリー、そしてモリアーティの友情?が深まる。シャーロックがモリアーティと共に滝から落ちる原作を踏襲しているが、ラストシーンはシリーズ3が待ち遠しい終わり方になっている。ただシリーズ3の撮影は2013年3月から撮影開始ということで、日本での放映はだいぶ先。 (評価:4)
SHERLOCK/シャーロック シーズン3
形式:TVシリーズ
放送:2014年(日本 2014年)
演出:Paul McGuigan、Toby Haynes 脚本:スティーヴン・モファット、マーク・ゲイティス、スティーヴ・トンプソン 撮影:Fabian Wagner 音楽:David Arnold、Michael Price
BBC製作のTVシリーズ。シリーズ3は#7"The Empty Hearse"、#8"The Sign of Three"、#9"His Last Vow"で、それぞれ原作の「空家の冒険」「四つの署名」「最後の挨拶」に対応している。
衝撃的な前回ラスト、ライヘンバッハの滝ではなくビルの屋上から飛び降りたシャーロックがどうやって自殺を偽装したかのトリックの種明かしが2年間のお待ちかねだったが、その話題を集めたことと、この間にカンバーバッチが『スタートレック』カーン役で出世したこともあって、パワーアップした飛躍感が楽しめる。
もっとも若干羽目を外し過ぎているところもあって、#9のラリった演出とストーリーは賛否が分かれるところ。 ラストは*****登場でシリーズ4へ。
#7は、シャーロックが2年ぶりにワトソンのもとに帰ってくる。怒り心頭のワトソン、失踪に一枚かんでいた兄マイクロフトとのギャグ、偽装自殺のトリック、ハドソン夫人との再会、ワトソンの新恋人メアリーの登場、臨時助手モリーとのタッグなどで新シリーズへ繋げる。シャーロックが戻ったのは国家テロ陰謀の解明のためで、ワトソンの誘拐、鉄道マニアの情報から国会議事堂の爆破テロを阻止するのが今回の事件。帰ってきたシャーロックはかなりお茶目で、やり過ぎるくらいにコメディ。シャーロックとモリアーティのキスシーンも。
#8は、ワトソンとメアリーのウエディング話。社会不適応者のシャーロックが、ベストマン(花婿付添人)スピーチをする。レセプションにはハドソン夫人、モリー、レストレード警部らのレギュラーやワトソンのかつての上官もやってくる。シャーロックが、過去のエピソードを紹介するも失言だらけというコメディ仕立てだが、レセプションに殺人犯が紛れ込んでいることがわかる。
#9は、新聞社の外国人オーナー、マグヌセンが情報をもとにイギリス政界を牛耳り、マイクロフトも手出しできないという設定。プライベートで脅迫されている国会議員の依頼を受けたシャーロックも子供のようにあしらわれるが、ワトソンと敵陣に乗り込むと、思わぬ展開が・・・実は前2話が本話の伏線だった。シャーロックの薬中姿も楽しめる。 (評価:2.5)
SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁
形式:TVスペシャル
放送:2016年(日本 2016年)
演出:Paul McGuigan、Euros Lyn 脚本:スティーヴン・モファット、スティーヴ・トンプソン、マーク・ゲイティス 撮影:スージー・ラヴェル 音楽:David Arnold、Michael Price
BBC製作のTVシリーズのスペシャル・ヴァージョン。テレビ放映された後、特別映像20分を加えた劇場版を公開。原題は"Sherlock:The Abominable Bride"で邦題の意。
シーズン3の最後で、シャーロックが一度東欧に向かう飛行機に乗り込み、全英にモリアーティのテレビ画像が流れて、再び呼び戻されるまでの数分間の物語となっている。
この間、コカイン依存症のシャーロックが夢とも幻覚ともつかない妄想の中で、ヴィクトリア朝時代にトリップし、ワトソンとともに「リコレッティ夫人の幽霊の謎」を解くという話になっている。
ヴィクトリア朝時代の事件は、自殺したリコレッティ夫人が幽霊となって夫を射殺するというもので、女性解放運動家たちが仕掛けたトリックの謎解きをホームズがするが、彼女たちがわざわざこのようなトリックを仕掛けた理由がよくわからない。さらには、夢ないしは幻覚のために、途中からモリアーティが闖入してきて、わけがわからなくなる。
モリアーティの闖入が、シーズン3の最後のモリアーティのテレビ画像とリンクしていて、おまけに麻薬中毒のホームズ同様に現代のシャーロックもコカイン依存症で、シャーロックの幻覚に付き合わされてしまうため、シーズン3のモリアーティの謎同様に意味不明のまま、観客はラストで投げ出されてしまう。
ホームズファン向けのマニアックな作りで、一般人の理解を端から考えていない。それなりに『シャーロック』らしい雰囲気を味わうことはできるが、シャーロックの幻覚に付き合うくらいの心の余裕が必要な作品。
シリーズの検視官モリーが、ヴィクトリア朝時代では男になりすまして出てくるのが、ちょっとした見どころ。ワトソンならずともすぐに女だとわかるが、ホームズが気付かないのか、気付いてもどうでもよいのか、いつも一言多いホームズが何も言わないのも謎。 (評価:2)
制作:英国放送協会
形式:TVシリーズ
放送:2010年(日本 2011年)
監督:ブライアン・カーク、サム・ミラー、ステファン・シュウォーツ 脚本:ニール・クロス
サイコパス女と黒人刑事で見せるキャラクタードラマ
BBCで放映されたTVシリーズの第1シリーズ全6話。ロンドン警察の黒人警部が主人公の刑事ドラマ。原題は"Luther"。
ルーサーは熱血刑事で家庭を顧みないために妻と別居しているといった設定。頭脳明晰で、天才科学者の女モリアーティか女レクターのアリス・モーガンに知恵比べを挑まれるが、見事対抗していく・・・が、実際には推理は独善的で説得力に欠ける。#1では取調室でルーサーが欠伸をして相手が欠伸をしなかったのを見て、欠伸が伝染しないのは演技しているからで犯人に違いないという見事な推理をして見せる。#2でも射撃の腕が見事なことから犯人は元軍人だと決め打ちする。
そういったルーサーの可愛さもあるが、怒ってドアの板をぶち抜くほどの暴力男だったりして、刑事でなくても妻に逃げられそうなキャラクター。
推理ものとしては雑なシナリオだが、ルーサー、アリスを軸にしたキャラクタードラマで見せる。細かいことを気にしないで見た方が楽しめる。
妻のゾーイの顔と首の長いのがドラマとは関係なしに気になる。
#1:連続女児誘拐殺人犯マドセンを廃工場に追い詰めたルーサーは、事件を解決した後、マドセンを助けずに落下させる。マドセンは昏睡状態。休職明けの老夫妻殺人事件で、娘のアリスが登場する。
#2:収監されている元軍人の父親の復讐のために、連続警官殺しをするやはり元軍人の息子の話。
#3:乳児の母親を誘拐して全身の血を抜くという猟奇殺人の話。ゾーイとの仲が復活する兆し。
#4:夜の独り歩きの若い女性の連続殺人事件。タクシー運転手が容疑者として浮かぶが、妻は浮気中。
#5:海外に高飛びしようとした男女が犯罪一味に捕まり、ダイヤを交換条件に女は舌を抜かれる。同僚の刑事イアンが事件に絡む。
#6:前話の続編。イアンがゾーイを訪ね、思わぬ展開に。ルーサーが冤罪で指名手配され、アリスに助力を求める。
(評価:2.5)
形式:TVシリーズ
放送:2010年(日本 2011年)
監督:ブライアン・カーク、サム・ミラー、ステファン・シュウォーツ 脚本:ニール・クロス
BBCで放映されたTVシリーズの第1シリーズ全6話。ロンドン警察の黒人警部が主人公の刑事ドラマ。原題は"Luther"。
ルーサーは熱血刑事で家庭を顧みないために妻と別居しているといった設定。頭脳明晰で、天才科学者の女モリアーティか女レクターのアリス・モーガンに知恵比べを挑まれるが、見事対抗していく・・・が、実際には推理は独善的で説得力に欠ける。#1では取調室でルーサーが欠伸をして相手が欠伸をしなかったのを見て、欠伸が伝染しないのは演技しているからで犯人に違いないという見事な推理をして見せる。#2でも射撃の腕が見事なことから犯人は元軍人だと決め打ちする。
そういったルーサーの可愛さもあるが、怒ってドアの板をぶち抜くほどの暴力男だったりして、刑事でなくても妻に逃げられそうなキャラクター。
推理ものとしては雑なシナリオだが、ルーサー、アリスを軸にしたキャラクタードラマで見せる。細かいことを気にしないで見た方が楽しめる。
妻のゾーイの顔と首の長いのがドラマとは関係なしに気になる。
#1:連続女児誘拐殺人犯マドセンを廃工場に追い詰めたルーサーは、事件を解決した後、マドセンを助けずに落下させる。マドセンは昏睡状態。休職明けの老夫妻殺人事件で、娘のアリスが登場する。
#2:収監されている元軍人の父親の復讐のために、連続警官殺しをするやはり元軍人の息子の話。
#3:乳児の母親を誘拐して全身の血を抜くという猟奇殺人の話。ゾーイとの仲が復活する兆し。
#4:夜の独り歩きの若い女性の連続殺人事件。タクシー運転手が容疑者として浮かぶが、妻は浮気中。
#5:海外に高飛びしようとした男女が犯罪一味に捕まり、ダイヤを交換条件に女は舌を抜かれる。同僚の刑事イアンが事件に絡む。
#6:前話の続編。イアンがゾーイを訪ね、思わぬ展開に。ルーサーが冤罪で指名手配され、アリスに助力を求める。
(評価:2.5)
LUTHER/刑事ジョン・ルーサー2
形式:TVシリーズ
放送:2011年(日本 2012年)
監督:サム・ミラー 脚本:ニール・クロス
BBCで放映されたTVシリーズの第2シリーズ全4話。ロンドン警察の黒人警部が主人公の刑事ドラマ。原題は"Luther"。
推理は相変わらずの強引さがある。ルーサーが犯人を見つける判断力も超能力と思えるほどの人智を超えたもので、そう思って観た方が納得できる。
妻を失い、ロンドン警察の体制も変わり、女性上司は退職。新たなボス、新たな部下と事件にあたる。プライベート面では死んだ浮気妻の代わりに、過去に逮捕した犯人の娘が登場。ポルノで生計を立てるファミリーに囲われていて、娘を保護しながらファミリーと戦う。この中でルーサーは死体遺棄の罪を殺人ごと他人になすりつけるという警部にあるまじき行動を取るというダーティぶり。ますます危険な男になっている。
展開は早く、ストーリーも練られていて、エンタテイメントとして楽しめる。アリスの出番が少ないのがやや寂しいか。
#1:妻殺しの疑いが晴れて、ルーサーは職場復帰。自殺を図り隔離病棟に入れられたアリスに脱走の手助けをする。ピエロの面を付けた男の連続女性殺人事件と、過去に係わった事件の犯人の娘ジェニーがポルノの仕事をしているのをやめさせる話が並行する。
#2:#1の後編。連続女性殺人犯に同僚刑事が拉致され拷問に。偽装スクールバスで子供たちが誘拐され、工業団地に連れ去られる。大量の水酸化ナトリウムで殺したあと溶かすつもりだと知り、団地へ。同僚刑事は自力脱出。
#3:金槌を持った狂人によるゲーム無差別連続大量殺人が起きる。一方、家に匿っていたジェニーが正当防衛から殺人を犯す。
#4:#3の後編。ジェニーの殺人を公にできず、ルーサーは死体処理をする。大量殺人犯を逮捕するものの模倣事件が起き捜査をすると双子の兄弟と判明。捜査の一方で、ファミリーを陥れる。 (評価:2.5)
LUTHER/刑事ジョン・ルーサー3
形式:TVシリーズ
放送:2013年(日本 2014年)
監督:サム・ミラー、ファレン・ブラックバーン 脚本:ニール・クロス
BBCで放映されたTVシリーズの第3シリーズ全4話。ロンドン警察の黒人警部が主人公の刑事ドラマ。原題は"Luther"。
シーズン3はシナリオの出来がいい。ルーサーの身辺捜査が絡み、回りはみんな敵というピカレスク・ロマン的孤高ぶりで、ルーサーのキャラが立っている。追い詰められたルーサーの人間的な面が魅力的に描かれ、事件もホラータッチの演出で結構泡立つ。後半のストーリーではルーサーが再び容疑者にされる設定に若干の粗さはあるが、アリスの登場で、ルーサーとの歪んだパートナーぶりが良く描かれている。ラストシーンで、恋人メアリーとアリスとどちらを殺すか? と聞かれた後のシーンからラストまでは大人のドラマ。
アリスの悪女っぷりもよく、結婚した夫が死んだという後の台詞「女の子はポニーを手に入れたいと思って大きくなるけど、私は未亡人になることがずっと夢だったの」(Some little girls grow up wanting ponies. I always wanted to be a widow. )。車の中でルーサーに思いを明かす台詞「欲しいものがあるのよ」「何を?」「あなた」("I wanted something." "- What?" "- You." )と、それに続く台詞「アリス、俺にはメアリーが」「まさか本気なんだ。あなた退屈して、週末にはバカになってるわよ」("Alice, Mary and I..." "Oh, do be serious. You'll be bored silly by the end of the week." )がいい。その後、「わたしとなら」(You and I are...)と言いかけて、ルーサーに"What? "と聞かれて、「まあいいわ」(Well...)と話を終える。
"You'll be bored silly by the end of the week."は字幕では、「あなた退屈で死ぬわよ」となっていて名訳。恋敵がいる場合に、好きな相手を振り向かせる時にぜひ使いたい台詞。
本作の主役はやはりアリス。
#1:死後にパンクな格好をさせた変態殺人事件が起きるが、ルーサーは別件の普通の殺人事件を担当させられ、ふたつの捜査が並行する。後者は前回配転させられた女性部下が公安部でルーサーの違法捜査の証拠を摑むためで、リプリーが協力する。
#2:#1の後編。変態殺人事件の2件目が起き、別件の捜査は被害者に殺された娘の父親が容疑者だと疑うリプリーに任せる。警官が殺され、変態殺人事件の背後にいる男が浮かび上がる。ルーサーに恋人ができる。
#3:妻をレイプされ殺された男が、刑期半ばで出所し再犯しようとする犯人を殺す。同様の殺人者を成敗し動画をネットに挙げ人々の正義の味方に。アウトローのルーサーの鏡像となる事件。
#4:ルーサーが犯人と取引して野放しにしていると逮捕され、それをアリスが奪う。犯人はルーサーに同じ気持ちを味わせようとメアリーを狙う。助けに行くアリスが捕まり、犯人はルーサーにどちらの女を助けたいかと聞くクライマックスが見せ場。 (評価:3)
LUTHER/刑事ジョン・ルーサー4
形式:TVシリーズ
放送:2015年(日本 2016年)
監督:サム・ミラー 脚本:ニール・クロス
BBCで放映されたTVシリーズの第4シリーズ全2話。日本では全1話で放映。ロンドン警察の黒人警部が主人公の刑事ドラマ。原題は"Luther"。
刑事としては問題ありということか、セブンシスターズで休暇中のルーサーの所に、部下の刑事が訪ねてくるところから始まる。アリスが死んだという知らせで、情報を持っていないか尋ねる。ルーサーはアリスと特別な関係にあるという前提で、並行してロンドンで起きたカニバリズムの連続殺人事件が起き、ルーサーは二つの事件を追って職場に復帰する。
アリスが関係していたダイヤ取引のボスを拉致し、セブンシスターズのコテージに監禁するというルーサーの無法ぶりは相変わらず。二つの事件の捜査で過去の事件の関係者が登場してくるが、説明がないので話がよく分からなくなるのが辛い。
新しい女性刑事エマが登場して、ルーサーに学んでルール無視の突入劇に進んで参加、カニバリズム犯人を射殺してしまうが、ルーサーが職務違反にならない方法を伝授するという、本作品らしいピカレスクぶりを発揮する。
犯人がアリスを殺した理由というのが、ルーサーにかつて保護を約束されたのに、ルーサーがアリスと国外に行かれては約束違反になるからというサイコぶり。アリス2号を狙った登場だが、アリスを演じたルース・ウィルソンほどには異常さが伝わらない。
やはりアリスのいない『刑事ジョン・ルーサー』は気の抜けたビールみたいで、雑なストーリー運びを忘れさせるほどには至らない。果たして続編はあるのか? (評価:2)
LUTHER/刑事ジョン・ルーサー5
形式:TVシリーズ
放送:2019年(日本 2019年)
監督:ジェーミー・ペイン 脚本:ニール・クロス
BBCで放映されたTVシリーズの第5シリーズ全4話。日本では全2話で放映。ロンドン警察の黒人警部が主人公の刑事ドラマ。原題は"Luther"。
4年ぶりの放映という割には、前回のあらすじ的なものがなく、前シリーズ登場のアリスが絡むダイヤ取引のボス・ジョージが説明なく登場するので、覚えていないと若干話が見えにくい。
メインの事件はまたもや連続猟奇殺人事件で、人間の体をサディスティックに損壊するのが趣味という精神異常な外科医と、それを幇助しつつ治療する精神科医の妻が犯人。ルーサーは新人のハリデー巡査部長と事件を捜査するが、相変わらずのルール破りで、人命優先を説くが哀れ新人警官は最後に退場してしまう。
並行してジョージの息子の誘拐が起き、ルーサーと同僚ベニーがこれに巻き込まれ、ルーサーは大忙し。こちらの事件を引き起こすのが6年ぶりに登場するアリスで、前シリーズのダイヤ取引の復讐戦。目まぐるしく人が現れ、殺されていくので事件の進行がわかりにくい。
ジョージの殺し屋にアリスが捕まり、ルーサーは連続猟奇事件捜査の傍らアリス救出までしなければならなくなるが、最後はジョージの企みでルーサーが殺人犯として警察に追われる身となる。
もっともドラマの中心は復活したアリスのルーサーへの命を賭けた愛の告白で、歪んだ二人らしい歪んだ愛のドラマとなっている。
アリス曰く、「あなたは誰にも関心がない。あなたに強制された者以外にはね。あなたにとっては敵も味方もみんな同じなのよ」("You don't care about anyone, John. Not unless they can feed your compulsions. Friends, enemies, it's all the same to you.")
さらに「問題は、ジョン、あなたが愛を理解していないことよ。真似事しかできない。それでは愛に気づけても理解はできない」("The thing is, John, you don't understand love. You can mimic it, you can recognise it in others, but you can never understand it.")という女心に至って、往年のアリスの面影が失われたのが寂しい。
アリスに甚振られ、「これが? これが? 愛なのか?」(" Is this it? Is this it? Love?")というルースに、"Yes."と答えるのがせめてもの女王様か。
#1:フードにLEDライトを埋め込んで顔を隠した男による連続猟奇殺人事件が発生。精神科医が真犯人を隠していることがわかる。一方ジョージの息子がアリスに誘拐されるが、ルースが説得して息子を解放。しかしジョージがベニーを拉致してアリスの引き渡しを求めると、アリスは変装してジョージの家へ。
#2:アリスはジョージの息子を殺害。ルースはベニーを救出してアリスとマークの家に隠すが、ジョージが雇った殺し屋に襲われベニーが死亡。倉庫に監禁されたアリスとマークを解放するが、逮捕されたジョージの奸計でルーサーが殺し屋殺しにされてしまう。猟奇殺人の方は、精神科医の夫が犯人だとわかり病院に向かうが逃亡。犯行をエスカレートさせるがルーサーの機転で逮捕する。そこにアリスが現れルーサーと揉み合ううちに死亡。ルーサーは逮捕される。 (評価:2.5)