海月衛 映画帖
~映画の大海原をたゆたう~

TVドラマレビュー(外国)──2001年~


制作:グリーンリットプロダクション、パドックプロダクション
形式:TVシリーズ 
放送:2002年(日本 2014年)
監督:ジェレミー・シルバーストン、デヴィッド・サッカー 脚本:アンソニー・ホロヴィッツ

ダンケルクの戦いを挟む戦時下の人々の心模様
 原題"Foyle's War"(フォイルの戦争)。第二次世界大戦中、イギリス海峡に面したイギリス南東部の町ヘイスティングスを舞台にした刑事ドラマ。ダンケルクの戦いを挟む、1940年5月から8月までのエピソード。
 1939年9月のドイツのポーランド侵攻による第二次世界大戦の開戦から半年、ドイツ軍がベルギー・オランダに侵攻し、英仏軍をダンケルクに追い詰めた戦況下で物語は始まる。
 第1話 "The German Woman"(ドイツ人の女)は、陸軍輸送部隊のサマンサ(ハニーサックル・ウィークス)が運転のできないフォイル(マイケル・キッチン)の専属運転手となり、フォイルの息子アンドリュー(ジュリアン・オヴェンデン)は空軍に志願、4月のノルウェー戦で片足を失った部下のミルナー(アンソニー・ハウエル)が職場復帰し、主要メンバーが揃う。
 フォイル自身も故国の危機に戦争省への転属を願い出るが叶わず、大学生のアンドリューが空軍に志願、先に志願して傷痍軍人となったミルナーの妻は別居してしまうという、戦時下の人々の心の様子が描かれる。
 事件はドイツ人が絡むもので、敵性外国人として隔離され、ドイツとの本土決戦前夜のイギリスが描かれる。
 第2話"The White Feather"(臆病者)はユダヤ人差別、第3話"A Lesson in Murder"(兵役拒否)は兵役拒否者、第4話"Eagle Day"(レーダー基地)はドイツ軍空爆が絡む。 (評価:2.5)

制作:グリーンリットプロダクション、パドックプロダクション
形式:TVシリーズ 
放送:2003年(日本 2014年)
監督:ジェレミー・シルバーストン、ジャイルズ・フォスター 脚本:アンソニー・ホロヴィッツ、マイケル・ラッセル

イギリスも日本と似たような島国根性という共通点
 第二次世界大戦中、イギリス海峡に面したイギリス南東部の町ヘイスティングスを舞台にした刑事ドラマ。ロンドン空襲が始まりドイツ軍上陸に怯える、1940年9月と10月のエピソード。
 軍部の専横、人々の愛国心の濃淡、資本家や特権層の堕落等、戦時下のイギリスの知られざる側面が興味深い。戦争になれば、イギリスも日本と似たような島国根性を発揮するという共通点が意外に面白い。
 刑事物としては推理が中心で、証拠なしに逮捕されてしまう強引さがあるが、当時はイギリスも日本の警察と似たり寄ったりということか。
 第5話"Fifty Ships"(50隻の軍艦)は、中立国アメリカの戦争協力の鍵を握るアメリカ人が絡む事件。第6話"Among the Few"(エースパイロット)は、軍用石油の横領事件、第7話"War Games"(作戦演習)はドイツとの密貿易業者、第8話"The Funk Hole"(隠れ家)は、ゲストハウスに疎開する富裕層が絡む。 (評価:2.5)

制作:グリーンリットプロダクション、パドックプロダクション
形式:TVシリーズ 
放送:2004年(日本 2014年)
監督:ジェレミー・シルバーストン、ギャヴィン・ミラー 脚本:アンソニー・ホロヴィッツ、ロブ・ヘイランド

物資不足、軍用接収、勤労奉仕などの国家総動員体制
 第二次世界大戦中、イギリス海峡に面したイギリス南東部の町ヘイスティングスを舞台にした刑事ドラマ。年が変わって本格化するロンドン空襲が続く、1941年2月から6月までのエピソード。
 ドイツ海軍Uボートに海の補給路を断たれ、物資の不足が常態化する中、農業生産に駆り出される女性など国家総動員体制が敷かれるエピソードが興味深い。空軍のエースパイロットとなったアンドリューとサムの恋愛も進行。サムの飄々としたキャラクターが、戦時下のシリアスなドラマに安らぎを与えている。
 第9話"The French Drop"(丘の家)は、特殊作戦執行部の秘密作戦と殺人事件が絡む。第10話"Enemy Fire"(癒えない傷跡)は、空軍病院用に接収されたマナーハウス、第11話"They Fought in the Fields"(それぞれの戦場)は女性の農場勤労奉仕と捕虜収容所、第12話"A War of Nerves"(不発弾)は不発弾処理班の汚職と戦時中の共産主義者に関するエピソード。 (評価:2.5)

制作:グリーンリットプロダクション、パドックプロダクション
形式:TVシリーズ 
放送:2006年(日本 2014年)
監督:ジェレミー・シルバーストン、ギャヴィン・ミラー 脚本:アンソニー・ホロヴィッツ

アメリカ参戦で駐留する兵士に女たちも色めく
 第二次世界大戦中、イギリス海峡に面したイギリス南東部の町ヘイスティングスを舞台にした刑事ドラマ。年が変わって真珠湾攻撃をきっかけとするアメリカ参戦後の1942年3月と8月のエピソード。
 プレイボーイのアンドリューに転属先で新しい恋人ができ、振られたサムはアメリカ軍兵士と急接近。サスペンスだけでなくラブストーリーも入れるという定番の展開になる。
 第13話"Invasion"(侵略)は、ヘイスティングス近郊の村にアメリカ軍の工兵隊がやってくるシーンから始まる。農地を接収して飛行場を建設。男不足の村の女たちが色めき立つ中、殺人事件が起きる。
 第14話"Bad Blood"(生物兵器)は、冤罪調査のために管轄外のハイズ村に出向いたフォイルが、極秘の生物兵器実験が絡む事件に遭遇する。 (評価:2.5)

制作:BBC
形式:TVドラマ(単発)
放送:2004年
監督:フィリップ・マーティン 製作:ジェシカ・ポープ 脚本:ピーター・モファット 撮影:ジュリアン・コート 音楽:マーレイ・ゴールド

ホーキング役の若いカンバーバッチにファン垂涎
 原題"Hawking"。BBC制作の90分テレビドラマで、ホーキング役をベネディクト・カンバーバッチが演じていることで話題になった。
 ホーキングはビッグバン理論の研究者、というよりもALS(筋萎縮性側索硬化症)で車椅子に座った物理学者としてよく知られている。
 その彼が21歳で病気を発症して、進行するALSと闘いながら特異点定理の博士論文を発表するまでを、1978年のノーベル物理学賞受賞式前日のロバート・ウィルソンとアーノ・ペンジアスのテレビ・インタビューと並行して描いていく。二人はベル研究所の研究者で、1964年にビッグバンの証明となる宇宙マイクロ波背景放射の観測に成功したことでノーベル賞を受賞したが、ホーキングの論文発表は1965年で、二人が観測当時、ホーキングの名前すら知らなかったことをインタビューで明らかにしているのが面白い。
 本作はセミドキュメンタリーで進行するが、特異点定理が生まれるまでの過程は科学ドキュメンタリーではないので軽く触れられる程度。ホーキングを支える家族愛や恋人との恋愛、学内での青春シーンもあるが、かといって難病と闘う科学者の感動物語でもなく、むしろホーキングの伝記として観るのが妥当。
 そうした点では過不足なく観られるが、科学ドキュメンタリー、恋愛物語、感動物語のどれを期待しても、十分ではない。
 最大の見どころはカンバーバッチの演技で、ALSの進行に合わせて体が不自由になっていくが、正直、特にすばらしい演技をしているわけでもなく、若いカンバーバッチが見られるというファン向けの作品。
(評価:2.5)

制作:FOX
形式:TVシリーズ 
放送:2005-2006年(22話)(日本 2006-2007年)
監督:ポール・シェアリング

平均的アメリカ人が好む徹底した大衆向けドラマ
 第4シリーズまで制作された人気ドラマで、話題にもなったので日本にもファンは多い。しかし、2話まで観て、続きを見る気をなくした。おそらく肌に合わなかったということで、最後まで見れば面白いのかもしれない。
 保守的といわれるFOXテレビ制作の平均的アメリカ人が好む大衆向けドラマ。刑務所や脱獄をテーマにしたTVドラマや映画は古くからあるが、無実の死刑囚の兄を脱獄させるために主人公が罪を犯し、兄と同じ刑務所に投獄されるという無理やりな設定。アメリカではどこまで囚人の人権が保障されているのかは知らないが、面会に来た恋人とセックスするシーンもあってサービス満点。用意周到な主人公が脱獄のために、刑務所の設計図を全身に刺青しているという奇想天外さを受け入れられるかどうかが、このドラマを面白いと感じるかどうかの分岐になる。 (評価:2.5)

制作:FOX
形式:TVシリーズ
放送:2007年(24話)(日本 2008年)

必見は「この父にしてこのジャックあり」か?
 不死身のジャックの中国に囚われの身では活躍させられないと見えて、アメリカに返還される。シリーズ6の話は中東の国との戦争の危機を背景に、テロリストに渡った小型核爆弾の争奪戦がメイン。さらに小型核爆弾を横流しするロシアの元軍人、ロシアの軍事技術情報の入ったICチップを狙う中国外交官が絡む。
 いつもの通り、事件の発端は何だったか忘れさせるくらいのストーリー展開だが、ジャックの父兄が黒幕として登場すると、ジャックが犯罪者同然の性格となった家庭環境が納得できるというもの。面白くするためなら何でもやるというこのシリーズの真髄を見ることができる。
 廃人となったオードリーにジャックが悲しみ憤慨するが、ジャックほどにはいい女に感じられないのはなぜか? (評価:3)

24-TWENTY FOUR- リデンプション

制作:FOX
形式:TVスペシャル
放送:2008年(日本 2009年)

うらぶれたジャックが物悲しい
 シーズンの6と7の間に入る話。ジャックがうらぶれていて、ちょっと物悲しい。その点では、破天荒なジャックではないのが残念。シリーズ同様に、リアルタイムで進行する2時間ドラマだが、どうしても物足りなさが残る。でも、物語的にはシーズン7と絡んでいる。
 チルドレン・ソルジャーが題材 (評価:2.5)

24-TWENTY FOUR- シーズンVII

制作:FOX
形式:TVシリーズ
放送:2009年(24話)(日本 2009-2010年)

サイバー戦争の実際を知ることができる
 いわずと知れた不死身のジャックの第7シリーズ。シーズン5で死んだはずのトニーが復活するが、ジャックのやり過ぎにCTUは解体され、ビル・ブキャナンとクロエまでが地下に潜ってしまう。ジャックを入れてやっぱり、この4人が人気者だったのね、と改めて認識させられる。個人的には日系美人のミシェルに復活してもらいたいけど、さすがに無理? 新キャラにFBI捜査官ルネが登場するが、女ジャックともいえる見事な暴れぶりがいい。
 このシリーズの最大の注目点は、話題のサイバー戦争のシュミレーションが観られること。ホワイトハウスまでテロ攻撃されて、そんなバカなと思うか、あり得ると思うか。 (評価:3.5)

24-TWENTY FOUR- ファイナル・シーズン

制作:FOX
形式:TVシリーズ
放送:2010年(24話)(日本 2013年)

どっちがテロリストか判らない
 これで見納めのファイナルシーズン、第8シリーズ。超ハイテクの新CTUが発足するが、旧メンバーはクロエだけ。ジャックはリタイアするつもりだったが、という寂しい状況。そうなればジャックの活躍も限られるのか、どっちがテロリストか判らないくらいに暴走する。『13日の金曜日』のジェイソン張りに鉄仮面をつけたジャックも登場して、破滅への道をひた走る。
 私怨のみで行動するジャックは、これまでのシリーズと比べるとかなり異質。そんなジャックに感情移入できるかどうかが評価の分かれ目になるかもしれない。
 核物質を巡る話。すべての電子機器を破壊するパルス爆弾も登場するが、こちらは未だ現実には実用化されていない。 (評価:3)

24 -TWENTY FOUR- リブ・アナザー・デイ

制作:FOX
形式:TVシリーズ
放送:2014年(12話)(日本 2016年)

オバサンになって一回りかっこよくなったクロエ
 前回、友達を殺された復讐からロシア外相を殺害、テロリストになって逃亡したジャック。4年間武器商人に雇われながら組織犯罪集団を陥れていたが、訪英中のヘラー大統領暗殺計画を知って姿を現す。
 テロリストはアルカイダ系組織の夫を米軍無人機に殺された恨みを持つ無慈悲な妻。無人機を乗っ取ってロンドン爆撃の脅しをかけ、アメリカ大統領の命を要求する。ジャックは、ウィキリークスのような組織に属しているクロエとCIAの女バウアーを相棒にテロ阻止に奮闘する。
 一件落着かと思いきや例によってCIA内部に悪者がいて、乗っ取り装置は各国軍隊を操れると、チェン・ズィーが米中戦争を画策。これにバウアーに恨みを抱くロシアが加わる。
 ジャックの恋人ながら、今回も足を引っ張るヘラーの娘オードリが退場。事件解決後は、ジャックはクロエとの人質交換でロシアへ。とりあえずは続編の作れる終わり方となっている。
 見どころはオバサンになって一回りかっこよくなったクロエ。キャットウーマンさながらの目張りを入れて、天才ハッカーとしてチェンにも一目置かれる存在に。物語はほとんどサイバー戦争なので、その辺の知識がないと展開についていけないかも。
 もっともファイアーウォールを破っただけで米軍を操れるなど、かなり都合よくできていて、テンポだけでは誤魔化せない設定の穴が目立つ。 (評価:2.5)

制作:NBC
形式:TVシリーズ
放送:2009-10年(18話)(日本 2010年)

超能力者群像が魅力のシリーズだがファイナルは侘しい
 この作品は実質的にはシーズン3で終わっていて、シーズン4はサイラーを上回るキャラクター、サミュエルを登場させて、それを軸に展開する。
さまざまな能力を持つ超能力者が登場し、バラエティ感のある新機軸の超能力物を打ち出したシーズン1(2006-7)。シーズン1の超能力設定に無理やり説明を与えようとして、キャラクターが漂流するシーズン2(2007)。ストーリーにも設定にも矛盾をきたし、脚本がボロボロとなったシーズン3(2008-9)。人気が出て延長になるアメリカのTVシリーズと少年ジャンプの連載にはありがちなことだが、それでも見続けたのはやはりヒーローズのキャラクターたちの魅力にあった。
超能力者たちのその後の物語であるシーズン4は、やはりその魅力が失われていて、軸となるサミュエルの超能力に無理があって、やはり第2部の違和感は拭えない。ラストシーンでシーズン1のプロローグに戻った時、忘れていた思い出に出合ったような気がした。
このシリーズは、漫画的な荒唐無稽感が面白く、それを阿呆くさいと思う人にはつまらない。 (評価:2.5)