海月衛 映画帖
~映画の大海原をたゆたう~

TVドラマレビュー(日本)──2001年~


製作:攻殻機動隊製作委員会(Production I.G、バンダイビジュアル、バンダイ エンタテインメント、電通、日本テレビ、徳間書店、ビクターエンタテインメント、マンガ エンタテインメント)
制作:Production I.G
形式:TVシリーズ総集編 放送:2002-3年(26話)
監督:神山健治
美術:竹田悠介
音楽:菅野よう子

下手な邦画を凌ぐ神山版は取っつきやすい近未来SF
 2002~3年に放映されたTVシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』全26話の「笑う男」エピソードをまとめた総集編。士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』が原作、監督は神山健治。
 2030年、公安9課トグサの友人が事故死し、6年前の企業サイバーテロ事件犯・笑う男の犯行予告が入る。笑う男の正体を追う9課のメンバーは、電脳硬化症の医薬品許認可に絡む政界汚職が関係していることを突き止めるが、逆に解散に追いやられる。
 Production I.G制作で、作画レベルはジャパニメーションを代表する。CGも違和感なく、通路や図書館内等のカメラ移動に効果的に使われている。全体のレイアウトや演出も良く、下手な邦画を凌ぐ。
 企業と政界の汚職、サイバーテロ、警察ドラマを組み合わせた取っつきやすい近未来SFで、ストーリーも飽きさせない。ただSF設定が説明不足なため、シリーズを知らないと用語やシーンにわからない点が出てくるのが難。
 ファン以外は相手にしないということだが、その姿勢が作品の一般への広がりを妨げていて、良くできた作品なのに残念。 (評価:3)

攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG Individual Eleven

製作:攻殻機動隊製作委員会(Production I.G、バンダイビジュアル、バンダイ エンタテインメント、電通、日本テレビ、徳間書店、ビクターエンタテインメント、マンガ エンタテインメント)
制作:Production I.G
形式:TVシリーズ総集編 放送:2004-5年(26話)
監督:神山健治
美術:竹田悠介
音楽:菅野よう子

ミリタリー好きには堪らない迫力ある戦闘シーン
 2004~5年に放映されたTVシリーズ『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』全26話の「個別の11人」エピソードを中心にまとめた総集編。士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』が原作、監督は神山健治。
 2032年、テロリストグループの事件を解決し、公安9課は復活を遂げる。テロリストグループを追ううちに、アジア難民を巡る政府・軍の策略と、リーダーに導かれる出島の難民の武装蜂起の争いに巻き込まれ、首相クーデター・核・アメリカの原潜も絡んだ話に発展する。
 制作はProduction I.G。作画も演出もレベルを保っているが、全体に話が一本調子。TVシリーズをまとめて観ると冗長感は否めない。
「個別の11人」に関連して電脳の説明があるが、前作に比べるとSF設定の説明は丁寧。ストーリーも比較的馴染みやすく、攻殻を知らない人でも比較的ついていける。
 見どころは後半の自衛軍の戦闘シーンで、海と空を中心にミリタリー好きには堪らない迫力あるシーンが展開される。 (評価:2.5)

制作:フジテレビ
形式:TVシリーズ 放送: 2007年11月3日 - 2008年1月26日(11回)
監督:本広克行 演出:波多野貴文、藤本周 脚本:金城一紀 撮影:川越一成

岡田君の体当たり演技と堤真一のガニ股歩き
 そもそも最初に4(#9-11)があって、残りの#1-8は付け足しだったのではないかという気がする。
このドラマは岡田君の体当たりの演技と堤真一のガニ股歩きを見るためにあって、残りのSPは個性を出そうとして失敗している。ナイフジャラジャラのテロリストとか、相当無理のある病院立て籠もりとか、よくわからない民間人護衛とか、思わせぶりな設定のための設定に終始して物語本体が軋んでいるが、エピソード4は意外性もあって楽しめる。平田満の演技が渋くて良い。
 かつてのプロレタリア映画の星・山本圭が悪徳政治家役で出ていて、過ぎた時間にちょっと感傷的な気分に浸れる。 (評価:2.5)

SP 革命前日

制作:フジテレビ
形式:TVスペシャル
放送:2011年3月5日
演出:波多野貴文、田澤裕一 脚本:金城一紀 音楽:菅野祐悟

これを見ないと革命篇に繋がらないというSPの非情さ
 副題にもあるように次の革命篇のプロローグ。事件がなにも起きないという点では映画のためのプロモーションにすぎないが、TVでの放送はともかく、これを単体でビデオで売るという商法がいやらしい。しかし、これを見ないと革命篇に繋がらない。
それでも内容的には、同じプロモーションでもこれから革命が始まるという緊迫感があるだけ野望篇よりはマシか。 (評価:1)

制作:四畳半主義者の会(アスミック・エースエンタテインメント、フジテレビジョン、ソニー・ミュージックエンタテインメント、電通、東宝、角川書店)
形式:TVアニメシリーズ
放送:2010年(11話)
監督:湯浅政明 脚本:上田誠、湯浅政明 作画監督:伊東伸高 美術:上原伸一 音楽:大島ミチル

バラ色の大学生活を夢見る大学生の四畳半世界の妄想
 森見登美彦の同名小説が原作。アニメーション制作はマッドハウス。
 京都大学3回生の男子学生・私が主人公の一人称のアニメーション。バラ色の大学生活を夢見て入学した大学生が、四畳半世界の妄想を描く青春ドラマ。
 妄想に登場するのは、運命の黒い糸で結ばれた悪友・小津、1年後輩の女子学生・明石さん、同じアパートに住む謎の大学8回生・樋口清太郎、占い師の老婆等々。
 四畳半世界で妄想するバラ色のキャンパスライフといえばサークルで、小津が足を引っ張り、明石さんほかの女性たちが妄想を駆り立てるという青春の蹉跌と後悔を一話完結で繰り返す。
 第1話のテニスサークルに始まり、映画、サイクリング、ソフトボール、英会話、ヒーローショー、読書に入部する。第4話は変則的で樋口清太郎の弟子、第9話は福猫飯店の諜報員、第10・11話は四畳半世界が舞台となる。
 第4・5話では樋口と親しい歯科衛生士の羽貫涼子、樋口のライバル・城ヶ崎マサキが登場。第6~8話は羽貫涼子、ラブドールの香織さん、文通相手の樋口景子とのトリプル・ブッキングしたデートのそれぞれの並行宇宙からなる妄想。
 実写を含むコラージュ画像や様々な技法を試みる作画や背景、デフォルメされたパースなど、斬新な映像表現が見どころ。全編、私の饒舌なモノローグが入る独特な世界観が面白い。カメラが前に進みながらスタッフがクレジットされていくオープニングも必見。 (評価:2.5)

制作:ソニー・ミュージックエンタテインメント
形式:TVドラマ(単発)
放送:2018年11月28日
監督:松本壮史 脚本:三浦直之、松本壮史 撮影:後藤武浩 美術:上杉桐香

内容は薄いが伊藤万理華と望月綾乃のコントはそこそこ面白い
 元カノ(望月綾乃)と今カノ(伊藤万理華)が、カレ(松澤匠)に頼まれて同居するというあり得ない設定のコメディ。望月がナメクジ以下の松澤をカレにしていたのはともかく、交際2か月の伊藤がカレに愛想をつかさないのが不自然。
 設定はどうでもいいとばかり、ズボラと几帳面な性格の二人の漫才的な掛け合いで見せていくが、二人が同居するうちに親友になっていくという結末も予定調和。
 元乃木坂46の伊藤万理華のアイドル性だけでもっている作品だが、望月と伊藤のコントはそこそこ面白い。
 TOKYO MXの深夜ドラマに相応しいサイズ感で内容は薄い。 (評価:2)

制作:HJ Holdings,Inc
形式:TVシリーズ
放送:2021年(10話)
演出:菅原伸太郎、中茎強、久保田充 脚本:池田奈津子 音楽:Slavomir Kowalewski、A-bee

迫力に欠けたゾンビよりも恋愛モードの方が気持ち悪い
 テレビとしては日本初のゾンビドラマ。三浦半島を舞台にゴーレムウイルスが感染爆発。人々がゾンビとなり、市街がゴーストタウン化しただけでなく自衛隊横須賀駐屯地も全滅する中、自動車整備工の響(竹内涼真)を主人公に恋人・来美(中条あやみ)、元同級生・等々力(笠松将)らがサバイバルする。
 随所にアメリカのTVドラマ『ウォーキング・デッド』を連想させるところがあり、日本版『ウォーキング・デッド』ともいえるが、地上波ということもあって一般向けにゾンビのメイクは怪我をした程度でしかなく、バイオレンスシーンも抑えめ。TVドラマの主視聴者である女性を意識して、恋愛要素を強くし、エンディングでは響と来美のアツアツの回想シーンで締め括るのが気持ち悪い。
 トンネル崩落事故に巻き込まれた響が数日後に脱出すると外の世界は一変していて、いきなりゾンビに襲われてしまう。助かった一部市民たちと避難所を求めながら来美を探すというのが最初のモチーフ。避難所である横須賀駐屯地の研究所を目指すといきなりテロリスト扱いをされて、海上の猿島に逃れる。
 一方の来美はゴーレムウイルスの抵抗遺伝子を持っていることから、ワクチン開発に寄与するとして研究所に保護され、首藤教授(滝藤賢一)に協力。しかし首藤教授はマッドサイエンティストで、16年前に死んだ妻を冷凍保存。死んだ細胞を再生させるゴーレムウイルスを開発中で、それが外部に漏れて感染爆発。ワクチンを作ると偽って、開発を続けていたのがいたのが真相。その実験体として響の母を人体実験に使っていたという因縁話が絡む。
 首藤がゴーレム化し、響が倒したところで終わるが、設定に荒さが目立ち、ゾンビ物としても迫力に欠けている。 (評価:2)

愛と世界が終わる日に Season2

制作:HJ Holdings,Inc
形式:インターネットドラマシリーズ
放送:2021年(6話)
演出:菅原伸太郎、中茎強、久保田充、山田信義 脚本:池田奈津子 音楽:Slavomir Kowalewski、A-bee

バイオレンスや残酷描写も過激になり本格ゾンビ物に
 日本テレビで放映されたSeason1の続編。
 続編はインターネット専用の配信となったが、地上波の制約がなくなった分、バイオレンスや残酷描写も日本版『ウォーキング・デッド』らしく過激になり、ゾンビ物として本格的になった。
 舞台は三浦半島。猿島からシェルター「希望の家」に避難した響(竹内涼真)は、元科学者の父と再会。恋人・来美(中条あやみ)が記憶喪失となり、治療薬を求めて福島へ。
 シェルター内では施設のクラブ会員と避難民の間で軋轢が高まったところに、謎のグループが操るゾンビに追われた等々力(笠松将)らがやってきて、最初に避難した紹子(安藤玉恵)の親族だと偽って入居する。
 施設内にしばしば謎のグループが操るゾンビが侵入し被害を出したことから、手引きする者がいるのではと疑心暗鬼が高まるが、謎のグループは内紛から施設を出て行った者たちで、食糧を渡すように施設リーダーの秋吉(本郷奏多)をおどしていたことがわかる。
 施設内の内紛相次ぎ、登場人物たちは次々に死んで、生き残るのは食糧調達に出掛けたままの等々力と佳奈恵(飯豊まりえ)、妊娠がわかった来美とユン・ジアン(玄理)、施設を出る響と少女・結月(横溝菜帆)となる。
 展開の激しいジェットコースター・ストーリーで、中心メンバーが突然退場するのも『ウォーキング・デッド』に倣って予想外。等々力、佳奈恵もダリル、キャロル並みに逞しくなった。
 来美はシェルターを守るために謎のグループの人質となり、再び響が来美を探し求める展開。キャラクターも入れ替わり、シリーズ延長への布石は着々と打たれている。
 Season1で死んだユン・ジアンの弟ミンジョン役のキム・ジョヒンが謎のグループのリーダーとして登場するのも気になる。 (評価:2.5)